行政書士試験の概要

一般的には、行政書士=”代書屋さん”というイメージでしょうか。どうやら、最近は法律家の一角?としての位置づけになりつつあるということらしいです。ただ、司法書士など他の士業の職域を荒らしているという問題もあちこちで起きているようです。

近年では、漫画「カバチタレ」、「特上カバチ」とそのドラマ化等により、急激に知名度が上がり、行政書士の資格取得を目指す人が急増しています。また、司法制度改革の一環で始まった新司法試験で受験者はロースクール卒業後3回という受験制限があり、その権利を使い果たしてしまった人が既に相当数いて、司法書士や行政書士を目指してくる人が多いようです。ロースクールの学生や司法書士等の有資格者なども受験する人が多くいると言われています。さらに各地域の行政書士会が近年ADR(裁判外紛争解決制度)の認証を取得して、行政書士も”街の法律家”(一般的には街の法律家=司法書士ですね)としてのプレゼンスを示すようになってきていることから、将来性をうかがわせる一つの要因になってきているようです。

これらの要素により、法律系資格試験の中でも特に行政書士試験はここ数年で急激に難化しています。その上、資格試験の世界では”第2次偏差値戦争”と言われているようですが、団塊ジュニア世代の中には転職機会を狙って資格取得を目指す人が多く、それが一層資格取得の闘いを激化させているようです。私たちの世代はこの歳になっても試験で苦戦を強いられるとは、何という巡りあわせかと思いますけど…。

それでも6割とれば合格できる絶対評価試験だから、ちゃんと体系立って勉強すればすぐに合格できるものと安易に考えている人が多いそうです。かく言う私も勉強を始めて1、2カ月はそのような認識でした。たしかに10年以上前は”法律系試験の登竜門”的な位置づけでした。

世間の認識とは異なり、合格圏内に入れる実力を身につけるには1,000時間以上の勉強が必要と言われ、法学部出身者でも試験の最低1年前から学習を開始するのが一般的と言われます。3回目、4回目という受験者も珍しくありません(お恥ずかしいことにこのあたりのことは勉強を始めるまで知りませんでした。まあ知らぬが仏ということもありますけど…。)。

ちなみに弁護士、弁理士、税理士は行政書士試験に合格しなくても、登録さえすれば行政書士として開業できます。また、公務員の特認制度というのがあって、行政事務に20年以上携わった公務員は試験が免除され、退職後(国家公務員法・地方公務員法で兼職は禁止されているため)に登録すれば開業できます(行政書士の地位を低下させるものだとして、日本行政書士会連合会や各行政書士会が廃止を要望しています。)。


○日時:毎年11月初旬〜中旬の日曜日午後に実施
○合格点:180点(300点満点)…法令科目で5割、一般知識科目で4割の足切りラインがある
○合格率:5%前後(絶対評価試験のため年度によってバラつきがある)
○試験時間:180分
○内容:
◆法令科目
■五肢択一式(40問・160点)
・基礎法学(2問)…何が出るが全く予想ができず、対策の講じようがないといわれる科目
・憲法(5問)…近年はかなりの難問が多い(司法書士試験の憲法とはだいぶ毛色が異なり、細かい知識が問われる)
・行政法(19問)…行政法総論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、地方自治法等から出題され、行政法で14問以上とることが合格の必要条件といわれる
・民法(9問)…近年の問題は司法書士試験レベルの問題が並ぶほど難化の傾向、民法である程度稼げることが合格の必要条件といわれる
・商法(5問)…商法総則、商行為、会社法から出題され、受験生が最も敬遠する科目で、2〜3問正解できれば合否に影響しないといわれる

■多肢選択式(3問・24点)…20個の語群から文章中の空欄に補充をする形式
 憲法から1問、行政法から2問出題される。比較的点がとり易いといわれる問題形式でここは落とせない。

■記述式(3問・60点)…事例問題について法令及び判例に基づき解答を40字程度で簡潔にまとめる形式
 行政法から1問、民法から2問出題される。年度によって採点基準が大きく変わる。一説によれば、行政書士試験は絶対評価試験とされているものの、あらかじめ一定の合格者数を見込んでおり、受験生の選択式問題の出来不出来に合わせて想定した合格者数になるように記述式の採点基準が設定されているらしく、実態は相対評価試験だといわれている。40字という限られた字数は一見書きやすいようで、必要なキーワードが書けなければ部分点すらももらえないので、択一の対策に加えて記述用の対策を十分しておく必要があるといわれる。

◆一般知識
■五肢択一式(14問・56点)
 「政治」、「経済」、「行政」、「国際」、「医療・労働」、「環境」、「情報通信」、「個人情報保護」、「文章理解」等、幅広い分野から出題される。資格試験の中では一般教養を問う問題が出題されるのは行政書士試験くらいしかないようである。一般知識とはいうものの、とても一般常識とは言えないレベルの問題が並び、しかも殊更に時事ネタが狙われるわけでもないので、勉強する上で的のしぼりようがなく、日頃どれだけアンテナを高くしているかが問われるだけに場当たり的な対応ではどうにもならない。足切りラインは4割とはいえ、かなりの難問が並ぶため、かなりのプレッシャーになる。実際に、合格点を越えている人のうちの相当数が毎年一般知識の足切りで涙を飲んでいると言われる。足切り回避のためには、的が絞りやすい「個人情報保護」、「情報通信」の勉強を十分にして、文章理解では3問中2問は正解できるようにして、これらの分野の計6〜7問のうち確実に5問程度押さえることが肝要と言われている。

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