トレーラーの走行中に外れたタイヤは凶器と化し、通りがかりの母子を襲った。タイヤが飛んだ原因は「整備不良」なのか、それとも……。自動車会社、銀行、警察、週刊誌記者、被害者の家族など、事故に関わった人それぞれの思惑と苦悩。そして「容疑者」と目された運送会社の社長が、家族・仲間とともに事故の真相に迫る。オヤジの戦いに思わず胸が熱くなる!直木賞候補となり、選考委員の高い評価を得た、イッキ読みの圧倒的エンターテインメント巨編!
◆読了日:2014/07/23
◆個人的評価:
◆「月刊ジェイ・ノベル」連載 489ページ(実業之日本社・2006/09/25)
<あらすじ> トレーラーの走行中に外れたタイヤは凶器と化し、通りがかりの母子を襲った。タイヤが飛んだ原因は「整備不良」なのか、それとも……。自動車会社、銀行、警察、週刊誌記者、被害者の家族など、事故に関わった人それぞれの思惑と苦悩。そして「容疑者」と目された運送会社の社長が、家族・仲間とともに事故の真相に迫る。オヤジの戦いに思わず胸が熱くなる!直木賞候補となり、選考委員の高い評価を得た、イッキ読みの圧倒的エンターテインメント巨編!
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かつて、直木賞にノミネートされた頃に図書館に予約をかけたんですけど、読む時間がなくて流してしまったら、話題が沸騰して予約数がすごいことになり、なかなか読む機会に恵まれずに、今頃になって読むことになりました。 あの言わずと知れた「財閥系某自動車メーカーのリコール隠し事件」を題材にした作品です(一応、本作はフィクションだと巻末に書かれていました。たしかに結末は事実とは異なります)。私が国際関係の課に在籍していた時に、「クラッチハウジングの破損」、「ハブの脱落」などについて書かれた文書を何回か目にしたことがあり、本作を読みながらこの事件を懐かしく思い出しました(当時、この財閥系某自動車メーカーがドイツの某自動車メーカーと業務提携していた関係で、この事件を受けて出された指名停止処分について、ドイツ政府から申し入れが来ていました)。 畳みかけるようにめまぐるしく展開していくストーリーは読者を夢中にさせます。そのあたりは本当にさすがです。企業小説を書かせたら池井戸さんの右に出る人はいないでしょうね。深夜に読み終わってすぐに寝付けなくなるくらいでした。 ただ、もうこれでもかというくらい勧善懲悪がてんこもり、中小企業が正義感をもってメガ企業にガチンコ勝負をかけていく展開は「下町ロケット」と全く同じコンセプトでしたので、若干食傷気味になりました(下町ロケットは財閥系某重工業、本作は財閥系某自動車メーカーという違いこそあれ、よく似た展開だと思いました)。 健全な経営をしていた中小企業の運送会社が、ある事故を境に一気に転落していき、四面楚歌の中でもがき苦しみ、ごく一部の正義感のある人間の力添えにより何とか最悪の事態を打開して、最後には全方位勝利するという、いかにも日本人好みのお話です。逆に言えば、こんなに世の中上手くいかないだろう、現実的じゃないと冷めた見方もできるかもしれません。でも、エンターテイメント小説としてはトップレベルであることは間違いありません。おススメです。 |