西加奈子「きいろいゾウ」

◆読了日:2015/08/10
◆個人的評価:
◆書き下ろし 426ページ(小学館・2006/03/20)


<あらすじ>

その昔。少女は、病室できいろいゾウと出会った。青年は、飛ばない鳥を背中に刻んだ。月日は流れ、都会に住む一組の若い夫婦が、田舎の村にやってきた。妻の名前は、妻利愛子。夫の名前は武辜歩。ツマ、ムコさんと呼び合う、仲のよいふたりだった。物語が、いま、はじまる。最新にして最深の、恋愛長編小説。



<たーやんの独断的評価>

いろいろと難しい問題を抱えていて、今のこの世の中では生きにくいだろうなと思える登場人物がたくさん登場します。私はある程度自分を重ねて読むことはできましたが、バリバリと仕事をして生きている人にはこのスローライフはちょっと理解しがたいかもしれません。

ツマとムコ、田舎の人々の会話はほのぼのとした気持ちにさせてくれます。心象風景がとても丁寧に描かれていますので、めまぐるしく展開していくようなスピード感はありません。物語の世界に入りにくいなと感じる人もいるでしょうから、好き嫌いは分かれるんじゃないかと思います。個人的には癒されましたが、貪るように一気読みしたいのであればあまりおススメできないかもしれません。

前半はツマ目線の描写と同じ場面のムコの日記で一つの章が構成されて、ゆっくりと物語が進んでいきます。後半からそのルールがいつの間にかなし崩しになり、ツマ目線、ムコ目線と交互に出てきますが、シンクロしなくなってきますので、若干の読みにくさを伴うと思います。あと、個人的には「と言う」を「とゆう」と表記しているのが気に入りません。