桐野夏生「夜また夜の深い夜」

◆読了日:2015/07/29
◆個人的評価:
◆「GINGER L」連載 373ページ(幻冬舎・2014/10/10)


<あらすじ>

どんな罪を犯したのか。本当の名前は何なのか。整形を繰り返し隠れ暮らす母の秘密を知りたい。

顔を変え続ける母とアジアやヨーロッパの都市を転々とし、四年前にイタリア・ナポリのスラムに住み着いた。国籍もIDもなく、父親の名前も、自分のルーツも、わからない。母と口論し外に飛び出すと、「MANGACAFE」と書かれたチラシを手にする男に呼び止められた。絶対に本当の名前を教えてはいけないという母のOKITEを初めて破って、私は「マイコ」と答えた。

私は何者?私の居場所は、どこかにあるの?

魂の疾走を描き切った、苛烈な現代サバイバル小説



<たーやんの独断的評価>

母が図書館で借りたものをまた借りして読みました。

主人公・舞子はアジアのとある国で生まれ、母とともに外国を転々としながらロクに学校も通わせてもらえないまま18歳になったところから始まります。舞子と同じような境遇にある七海(七海のモデルは重信房子の娘・メイがモデルと言われる)への手紙という形式をとって物語が進行していきます。

物語の舞台はイタリア・ナポリ。桐野さんのいつもの世界観のようなもの(=「毒」)は流れていますが、今までの作品とは一味違うテイストだったと思います。こういう作品も書くのね、実に手持の札の多い作家さんだと思いながら読み進めました。

ラスト30ページまで夢中になって読み進めて、翌日の楽しみにとっておきました。そうしたら…何なんでしょう、この物足りなさ感は…。印象としては、50ページくらいの落丁があったのではないかと思えるくらい肝心なところが語られないまま終わってしまったという感じです。これは何らかの狙いがあったんでしょうか、私にはよく分かりませんでした。