湊かなえ「境遇」

◆読了日:2014/07/30
◆個人的評価:
◆書き下ろし 244ページ(双葉社・2011/10/09)


<あらすじ>

主人公は36歳のふたりの女性。政治家の夫と幸せな家庭を築き、さらに絵本作家としても注目を浴びる主婦の陽子。家族のいない天涯孤独な新聞記者の晴美。ふたりは親友同士であるが、共に生まれてすぐ親に捨てられた過去を持つ。

ある日、「世間に真実を公表しなければ、息子の命はない」という脅迫状と共に、陽子の5歳になる息子が誘拐された。真実とは一体何なのか……。晴美と共に「真実」を求め奔走する陽子。すると、陽子の絵本のファンだという一人の女性の存在が浮上する。犯人はその女性なのか、それとも…。

人は生まれる環境を選べない。しかし、その後の人生は自分の意思で選び、自分の手で築いていくことができる。犯人の示す「真実」が明らかになるとき、ふたりの歩んできた境遇=人生の意味が改めて浮き彫りになっていく。



<たーやんの独断的評価>

陽子の視点、晴美の視点で描きながら、ストーリーが展開していくので、若干の読みにくさを伴います。そして、この手法をとったのはおそらく読者に誘拐犯人をミスリードさせるのが目的だと思われますが、構成が稚拙です。後半に入ったあたりで犯人の目星がつくと思います。ストーリーのコンセプトは悪くないと思いますが、構成面で粗さが目立ちます。

かつて図書館の予約人数が3ケタでなかなか借りることができない本でしたが、それほどの作品かなと…人気作家であることは間違いないんでしょうけど、私にとっては当たりが少ない作家さんです。

ちなみに、本作品は既にドラマ化されているようで、陽子役が松雪泰子、晴美役がりょうだったみたいです。