道尾秀介「龍神の雨」

◆読了日:2012/08/09
◆個人的評価:
◆「小説新潮」連載 410ページ(新潮文庫・2012/02/01)


<あらすじ>

添木田蓮と楓は事故で母を失い、継父と三人で暮らしている。溝田辰也と圭介の兄弟は、母に続いて父を亡くし、継母とささやかな生活を送る。蓮は継父の殺害計画を立てた。あの男は、妹を酷い目に合わせたから。――そして、死は訪れた。降り続く雨が、四人の運命を浸してゆく。彼らのもとに暖かな光が射す日は到来するのか? あなたの胸に永劫に刻まれるミステリ。大藪春彦賞受賞作。



<たーやんの独断的評価>

この作品は、単行本で出版された頃に一度図書館に予約をかけているんですが、借りずに予約の権利を放棄した本で、最近思いだして予約をかけたところ、文庫本のものが手元に来ました。小説を新刊の文庫本で読むのなんて久々です。

実によくできたミステリー小説だったようです。「ようです」というのは、私は読んでいてそこまで深読みはできなかったのですが、巻末の解説によれば、何気ないあらゆる描写や記述が実はきっちり伏線となっていたようです。さらに、字面のみで読みとれる流れ以外に、もう一つの流れも読みとれてこそ、この作品の面白さが分かるんだと思います。

面白かったことは面白かったのですが、この作品のあまりの暗さに辟易とさせられていたせいか、味わうように読むことができず、結末が早く知りたくて読み飛ばしてしまい、やっつけ仕事のような読書になってしまいました。そのために評価を3としています。結末は息もつかせぬような緊迫感でぐっと読者を引き寄せてくれます。

きっと、本作品を読まれた方はもう少し良い評価をつけるではないかと思います。