雫井脩介「銀色の絆」

◆読了日:2012/08/03
◆個人的評価:
◆書き下ろし 408ページ(PHP・2011/11/25)


<あらすじ>

栄光を勝ち取るか、無残に打ちのめされるか、これはもう遊びではないのだ――。
夫の浮気が原因で離婚、娘の小織とともに実家のある名古屋へと転居し、無気力な日々を送っていた藤里梨津子だったが、フィギュアスケートの名コーチに小織の才能を見出され、娘を支えることに生きがいを感じ始める。
「藤里小織の最大の伸びしろは、あなたにあると思ってます」とのコーチの言葉に、娘のためにすべてを懸ける決意をする梨津子。スケートクラブ内の異様な慣習にとまどい、スケート費用の捻出に奔走し、さらには練習方針をめぐってコーチとの間で軋轢が生じるのも厭わず、娘のことだけを考えてクラブの移籍を強引に進める――そんな母の姿に葛藤を覚える小織ではあったが、試合での成績も次第に上がっていき、やがて……。母娘の挑戦は、実を結ぶのか?
母と娘の絆をテーマにした、著者渾身の長編小説。
『犯人に告ぐ』『クローズド・ノート』をしのぐ興奮と感動!



<たーやんの独断的評価>

なかなか面白い作品でした。私はアスリート・モノの小説は割と好きな方なんですが、フィギュアスケートには全く興味がなく、冬季五輪ですらほとんどみません。そんな私が楽しめたのだから、フィギュアスケートが好きな方は是非とも読んでみたらいいと思います。最初から一気にストーリーに引き込まれて、400ページ超の本でもあっという間に読み終わると思います。

ストーリーの構成としては、主人公・小織が大学生になって友人と自宅で飲みながら過去を振り返るチャプターと小織の母・梨津子の目線で描かれるチャプターが交互に並べられながら、ストーリーが展開していきます。小織の成長もさることながら、母親が娘のために成長していく姿は感動すら覚えると思います。

一般のファンの人たちでも、せいぜいシーズンになってTVでスケートを見る程度だと思いますが、その華やかな表舞台に上がるまでには、本人や家族の様々な経済的、精神的、肉体的な苦難があり、それが非常によく描かれていますと思います。

ちなみに、詳しくはここでは控えますが、物語の舞台は愛知県で、小織と同い年の希和(日本のトップレベルのスケーター)のモデルは浅田真央です。