重松清「峠うどん物語」(上)・(下)


◆読了日:2011/12/14・2011/12/21
◆個人的評価:
◆「小説現代」連載 265ページ・243ページ(講談社・2011/08/18・2011/09/01)


<あらすじ>

中学二年生のよっちゃんは、祖父母が営むうどん屋『峠うどん』を手伝っていた。『峠うどん』のお手伝いが、わたしは好きだ。どこが。どんなふうに。自分でも知りたいから、こんなに必死に、汗だくになってバス停まで走っているのだ。おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん。そして『峠うどん』の暖簾(のれん)をくぐるたくさんの人たちが教えてくれる、命についてのこと――。【上巻】

五十年前の大水害の翌日、若いうどん職人が路上でふるまったうどんは、まずくて、おいしくて、希望の味がした。空襲から、まだ十数年しかたっていないのに。一面の焼け野原からせっかくみんなでがんばって復興したのに、今度は一面の海になってしまって、やり直し……。それでも、ひとびとはくじけなかった。いま一生懸命に生きているひとたちを、あたたかく、そして力強く包み込む――。【下巻】



<たーやんの独断的評価>

第一章「かけ、のち月見」、第二章「二丁目時代」、第三章「おくる言葉」、第四章「トクさんの花道」、第五章「メメモン」、第六章「柿八年」、第七章「本年も又、喪中につき」、第八章「わびすけ」、第九章「立春大吉」、第十章「アメイジング・グレイス」の10篇からなります。

重松さんの久々の長編です。各章ごとに話は完結していますが、時系列順に並んでいて各章が関連していますので、いわゆる「連作短編集」です。

中学2年生の孫娘の目線で物語は進んで行きます。祖父母が経営するうどん屋さん、これが葬祭場の対面にあって、このお店の手伝いをしているよっちゃんは、葬儀の後に訪れるお客さんの様子などから、学校では教えてくれない人の絆や命というものについて、学びながら少しずつ大人の階段を上っていきます。

主人公のよっちゃんとともに、ほっこりした気持ちにさせられ、人として大切なことを教えて(思い出させて)くれます。誰もが向き合わなければならない人の死、その時をどのように迎えるのか、どう向き合って自分なりに消化していくのか、について考えさせてくれる作品です。人の死について考えさせる本は、得てして必要以上に深刻な気持ちで読まなければいけないということを読者に強いるものが多いですが、この本はごくごく自然にそういう気持ちにさせてくれるところが他にはない良さかなと思います。

期待通りの「重松節」満載のお話です。老若男女ともにそれぞれが共感できる10の素敵なお話に感動してみてください。