■読了日:2011/10/31
■個人的評価:
■「野性時代」連載 590ページ(角川書店・2011/03/30)
<あらすじ> 急死したはずの父親から送られてきた一通のメール。それがすべての発端だった。創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人は、その不可解な遺書を手掛かりに、隠されていた私設実験室に辿り着く。ウイルス学者だった父は、そこで何を研究しようとしていたのか。同じ頃、特殊部隊出身の傭兵、ジョナサン・イエーガーは、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、ある極秘の依頼を引き受けた。暗殺任務と思しき詳細不明の作戦。事前に明かされたのは、「人類全体に奉仕する仕事」ということだけだった。イエーガーは暗殺チームの一員となり、戦争状態にあるコンゴのジャングル地帯に潜入するが…。 |
高野和明さんの作品を読むのは、数年前の「13階段」に続き2作目。本作品は今年の直木賞ノミネート作品です(その時の受賞作は池井戸潤さんの「下町ロケット」)。 これは面白いっ!読まずに図書館に返却しなくてよかったです。久々の満点評価!!読書して満腹感を味わえたのはいつ以来だろう…。イメージとしては、メイン・ディッシュに厚切りステーキが3枚くらい出てきて、和洋中それぞれの絶品の味付けで全く飽きることなく美味しく頂けたという感じです。ちなみに本作品はSF小説に分類されると思いますが、直木賞はSF小説には冷たいという専らの噂ですので、受賞に値する作品だと思います。 是非とも読んでみてください。ちなみに1ページにびっしり文字が詰まっていて590ページもあるし、内容的には結構難解で、しかもストーリーの本筋に関わることが多いため読み飛ばすこともできませんので、それなりに読了には辛抱を要すると思いますが、読者をすごい牽引力で確実にラストまで連れて行ってくれます。 私は純粋な文系人間ですので、内容が科学的に正しいのかどうかは分かりませんが、本作品を書くにあたって、膨大な調査をされたということは巻末の参考文献の数が物語っています。まあ余程理科系(特に薬学や進化論等)に精通した人でなければ、矛盾を感じずに読めるんじゃないかと思います。少なくとも私にはリアリティ満点でした。 アメリカ、日本、コンゴ民主共和国(旧ザイール)、ポルトガルにまたがる壮大なお話がきれいにラストで一点に集約されるところは圧巻です。 内容については、ほんのさわりだけ…(ネタバレにはなりません)。 創薬化学系の大学院生が父の死とともに国際的な事件に巻き込まれていき、そしてアメリカ人傭兵がコンゴ民主共和国の奥地で奇怪な任務に従事する、この2つの話が同時並行的に展開していく中で、驚くべき真相が明らかになってくる。アフリカのジャングルの奥地で、突然変異により現生人類とは次元を異にする能力を持つヒト科の”生物”が出現、機密情報を解読されることを恐れたアメリカがその生物抹殺に動く… 人類の愚かさについて考えさせられる作品です。 |