読了日:2011/03/08
個人的評価:★★★☆☆
「読売新聞」連載 306ページ(中央公論新社・2010/09/25)
<あらすじ> 近未来の渋谷。持てる者と持たざる者の差が増大し、ホームレスが溢れる街に、救いはあるのか――。 荒廃した街でしたたかに生き抜く孤独な少年・イオン。 あらゆる他人を信用せず、全てのおとなを敵視する彼だったが、地下に住む若者たちの集団「夜光部隊」との遭遇をきっかけに「アンダーグラウンド」に足を踏み入れ、そして…… |
桐野さんの作品を読むのは約1年ぶりです。読売新聞の土曜朝刊に連載されていた小説なので、ご存じの方も多いかもしれません。 文字どおり”アンダーグラウンドな”お話です。クライマックスまでは桐野さんお得意のこの世の暗部が絶妙に描かれていて、かなり興味深い展開です。近未来…日本はこんな荒んだ国になってしまうのか…、今の閉塞状況にある日本を見ていると、行きつくところはこんな荒んだ世界なのかもしれないと思えてきます。それだけにとてもリアルに感じることができると思います。全体的にストーリーとしては面白かったんですが、ラストの展開が期待していたものとまるで違ってしまったのがどうにも不満です…。ということもあって、★は3つです。この作品はかなり好みが分かれるじゃないかと思います。 余談ですが、この作品の中で私が特に食いついたのは、メインの舞台である都心の地下網についてです。東京の地下は地底都市のようになっているという話を聞いたことがあって、前からちょっと興味があったんですよね(地下には大きなビルがスッポリ入るほどの治水用の貯水池があるという話とか、地下鉄は何故道路の真下を通っているのか(区分地上権の問題)という話とか…)。参考文献をみると、秋庭俊『帝都東京・隠された地下網の秘密』とあります。この本も機会があったら読んでみようかなと思います。 (参考)本文抜粋 「おとなは三種類だ。優しいか、優しくないか、どっちつかずか。優しいおとなは滅多にいない。優しくないおとなからは、すぐ逃げろ。でも、一番僕たちを苦しめるのは、どっちつかずのやつらだ。しかも、そいつらは数が多い。絶対に信用するな。ともかく、おとなを見極めろ。それしか僕たちの生きる道はない」 |