読了日:2011/01/21・2011/01/24
個人的評価:★★★★☆(4.5)
「小説現代」連載 394ページ・392ページ(講談社・2010/11/15)
<あらすじ> 俺はまだ自分の運というやつに貸しがある。さぁ、勝負だ。全財産は、3円。転落はほんの少しのきっかけで起きた。大手証券会社勤務からホームレスになり、寒さと飢えと人々の侮蔑の目中で閃く--「宗教を興す」 段ボールハウスの設置場所を求めて辿り着いた公園で出会ったのは、怪しい辻占い師と若い美形のホームレス。世間の端に追いやられた3人が手を組み、究極の逆襲が始まる-- 驚愕のリアリティで描かれる極貧の日々と宗教創設計画。(上巻) 奇跡のような成功の中、私は思う。誰かに救ってほしいと。作りだされた虚像の上に見る間に膨れ上がってゆく「大地の会」。会員たちの熱狂は創設者の思惑をも越え、やがて手に負えないものになった。 ホームレス生活からの劇的な生還。だが多くを手に入れ、ふと振り返るとそこにあるのは空虚な祝祭と、不協和音だった。人の心を惹きつけ、操り、そして--壮大な賭けが迎える結末は。人間の底知れぬ強さとかぎりない脆さ。傑作長編小説、衝撃のラスト!(下巻) |
先日の直木賞にノミネートされながら受賞を逃した荻原氏の最新作です。「祈るべきは我らの真下」、「我が名を皆、大地と呼ぶ」、「我らの後に時は続く」の全3章から成る長編小説です。 なかなか面白い小説でした。★×5にしたいところですが、宗教団体「大地の会」が創設されてからしばらくの展開に若干中だるみがあったのと、何となく結末が予想できてしまったことだけが残念です。 私が集中して読んでいたせいもあるかもしれませんが、異様なくらいストーリーに引き込まれます。特にホームレスになり下がった前半部分などは、荻原氏ご本人がホームレスをしていたことがあるのではないかと思えるくらいリアリティ満点です。ひとしきりファミレスなどで読んでから、会計を済ませる時に、自分がお金を持っていて、ちゃんと300円を支払うことができているのが夢のように感じさせてしまうくらいです。 まだ単行本になってから2カ月ですので、文庫化は当分先だと思いますが、娯楽としての読書にはうってつけの本だと思いますので、是非とも読んでみてください。おススメです。 |