読了日:2010/02/11
個人的評価:★★★☆☆
「小説新潮」連載 344ページ(新潮社・2006/03/25)
<あらすじ> 警察官人生二十五年。不祥事をめぐる玉突き人事のあおりで、強行犯係の捜査員から一転、単身赴任の駐在勤務となった巡査部長の川久保。「犯罪発生率、管内最低」の健全な町で、川久保が目撃した荒廃の兆し、些細な出来事。嗅ぎつけた”過去の腐臭”とは…。捜査の第一線に加われない駐在警官の刑事魂が、よそ者を嫌う町の犯罪を暴いていく、本物の警察小説。 |
佐々木譲氏の作品は初見。先月発表された第142回直木賞作品「廃墟に乞う」を図書館に予約をかけたが、とりあえず事前に一作読んでおこうと思い、開架棚から本作品を借りてみた。 駐在所勤務の巡査部長を主人公とした連作長編小説。「逸脱」、「遺恨」、「割れガラス」、「感知機」、「仮装祭」の5篇からなる。基本的にはストーリーは独立しているが、5篇は時系列に沿っており、連作形式になっている。佐々木氏は警察小説を得意としているようで、「廃墟に乞う」も警察小説(こちらは短篇集らしい)である。あくまでも「推理小説」ではなく、「警察小説」である。 駐在所の警官が捜査に関与できないということを本作品を読んで初めて知った。主人公は強行犯のベテラン刑事としてのプライドもあり、捜査に関わることができないことについておそらく忸怩たる想いもあったことだろう。閉鎖的な村社会の中で地元の情報通や住民などから話を丹念に聴きながら、駐在所警官としての本分をわきまえつつ、自身の豊富な経験から鋭い洞察力で独自に捜査していく。もちろん手柄は警察署の刑事に持っていかれてしまうのだが、あくまでも捜査は彼の本来の任務ではなく、駐在所警官の任務の延長上にあるものとして主人公は捉えている。 警察や地域の防犯体制の実態がよく描かれていてなかなか興味深く読んだ。警察小説では横山秀夫氏と双璧か。ライトなタッチで書かれているので、とても読みやすい。ただ腰を据えて読むほどの内容でもないので、出張や旅行の際の手持無沙汰にうってつけだ。わざわざ買ってまでも読むほどの内容ではないと思う。 |