読了日:2010/02/06
個人的評価:★
書き下ろし 317ページ(講談社・2009/12/14)
<あらすじ> あいつの人生が終わり、僕たちの長い旅が始まった。中学二年でいじめを苦に自殺したあいつ。遺書には四人の同級生の名前が書かれていた―。背負った重荷をどう受け止めて生きればよいのだろう?悩み、迷い、傷つきながら手探りで進んだ二十年間の物語。 |
重松清氏の最新作。オビに書いてあった「渾身の書き下ろし」の謳い文句に偽りなし。 ここ数年でこれほど心の琴線に触れた本には出会えなかった。読むのに疲れて読む速度が落ちることはよくあるが、本の世界にはまればはまるほど読む速度が遅くなったという経験は初めて。主人公(設定では私と同い年)と彼とともに遺書に名前が書かれた女の子の二人が十字架を背負ってからの展開はとてもではないが、いい加減な気持ちで読めるものではなく、一行一行をかみしめるように読んだ。最後の頁を繰ったとき気づいたら午前3時。これが小説なのか、後半はずっと心臓をわしづかみにされているような感じで心身ともにぐったり。ラストシーンのスウェーデンの世界遺産「森の墓地(スコーグスシュルコゴーデン)」にある十字架は実に象徴的に描かれている。 遺されたものはこれほどまでに重い十字架を背負わなければならないのか、あまりにも切ない。私にはどう受け止めてよいかいまだに答えが出ていない。陳腐な言葉でレビューを書くのは不幸にも我が子を自殺で失った家族の方々や十字架を背負うことになった方々に失礼だと思うので今回はこの作品を紹介するだけに留めたいと思う(私が本作品に入れ込みすぎたせいなのかもしれないが、ネット上にあるレビューを見ると、あまりにもコメントが幼稚で浅薄だと感じた)。 *** 【追記(本作品のおススメ)】 *** このレビューをご覧になった方には是非とも本作品を読んでいただけたらと思います。おそらくこれほどの重荷を背負った経験のある人はそうそういないと思いますが、自分自身を主人公に重ね合わせて、じっくり本腰を据えて本作品を読んでみてください。 *** 【追記(その2)】 *** 先日(2010/03)、吉川英治文学賞を受賞。 |