東野圭吾「新参者」

読了日:2010/01/20
個人的評価:★★★☆☆
「小説現代」連載 348ページ(講談社・2009/09/18)


<あらすじ>

日本橋。江戸の匂いも残るこの町の一角で発見された、ひとり暮らしの四十代女性の絞殺死体。
「どうして、あんなにいい人が…」
周囲がこう声を重ねる彼女の身に何が起きていたのか。着任したばかりの刑事・加賀恭一郎は、事件の謎を解き明かすため、未知の土地を歩き回る。



<たーやんの独断的評価>

東野氏の最新刊。4カ月待ちで手元に来た。人気の刑事・加賀恭一郎シリーズ。このシリーズには、「卒業」、「眠りの森」、「どちらかが彼女を殺した」、「悪意」、「私が彼を殺した」、「嘘をもうひとつだけ」、「赤い指」がある。ガリレオシリーズと並んで比較的外れの少ないシリーズもの。「煎餅屋の娘」、「料亭の小僧」、「瀬戸物屋の嫁」、「時計屋の犬」、「洋菓子屋の店員」、「翻訳家の友」、「清掃屋の社長」、「民芸品屋の客」、「日本橋の刑事」の9編から構成される連作長編小説。

昔ながらのお店が立ち並ぶ人形町周辺、それぞれの店の人間模様などが、加賀が立ち寄って聴き込みをする中で鮮やかに、かつ魅力的に描かれている。各短編はラストで集約されることになるが、別々の家族の物語なので、登場人物がかなり多くなっている。それでいてたまにリンクもしているので、人間関係を把握するのに少々時間がかかるかもしれない。

推理小説の割にはほのぼのとしていてしかもありきたりな結末なので、人によって好みが分かれるかもしれない。個人的には推理小説としてもヒューマンドラマとしても中途半端だし、いつもの切れ味に欠けると思う。最近の東野氏の作品はどれもそれなりにハイレベルなのだが、秀逸と言えるほどのものがない。直木賞をとってしまうと枯渇してしまうのだろうか…。いわゆる問題作のようなものをバシッと出してほしいところだ。