読了日:2009/12/22
個人的評価:★★☆☆☆
「サンデー毎日」連載 436ページ(毎日新聞社・2008/07/10)
<あらすじ> 主人公の名は宝福喜朗。実におめでたい名前だが、いたって普通の人生を送ってきた定年間近のサラリーマン。ところが喜朗の今年の大晦日は、普通でないものになりそうだった。新年初売りの福袋を欲しがる妻と娘のために、デパートの行列で年越しをすることになったのだ……。 福袋売り出しまで48時間。喜朗が列に加わることで、行列する人々は不可解な出来事に巻き込まれていく。次々と勃発する小さな騒動。騒動が騒動を生み、やがてたいへんな事態に!しかしその原因が自分にあることを、喜朗は知らない。「何もしない人間が運命を変えてゆく」行列の先に待っているものは喜びか、悲しみか?一気に読ませる傑作長編! |
藤田宜永氏の作品は初見。「愛の領分」で第125回直木賞を受賞したことで知名度は高い。ちなみに妻は推理小説家の小池真理子氏。NHKの金曜ドラマ枠で本作品を原作とした「行列48時間」というタイトルで今年の10月から11月にかけて放映(視聴率は低調傾向)。私はドラマを先に観たので、人間関係を把握したうえで読み始めたが、とにかく登場人物がかなり多いので、本を先に読む人にとってはキャラクターを理解するのに時間がかかるだろう。最後の30ページになっても新たな登場人物が出てくるような始末。ただ、途中で何回か因果関係を整理するくだりが書かれているので参考になるだろう。ドラマは比較的原作に忠実に作られているようだが、小説のみ、ドラマのみに登場する人物も何人かいる。 ”風が吹けば桶屋が儲かる”式のとてつもなく長い因果関係によって結ばれた福袋の行列周辺で起きる数々の事件、出来事、人間模様。 一つ一つの出来事はそれなりに面白いのだが、同時進行的にそれぞれのドラマが展開していき、またそれはあり得ないくらい複雑に人間関係が絡み合っていて、リアリティに欠ける。知り合いの知り合いが近くにいすぎるのだ。手を広げすぎたため、収束させられないまま、ダラダラと長いストーリーになっており、読者を飽きさせる。同じシーンが何回も違う視点で描かれる箇所があるが、それもほどほどじゃないとね。なんせ、内容がなく、軽いタッチで書きすすめられている割に2段組436ページは長い。 |