明野照葉「女神」

読了日:2009/11/23
個人的評価:★★★☆☆
318ページ(光文社・2002/06/25)


<あらすじ>

誰もがため息をつくような美貌。仕事はトップセールスを誇り、恋人はエリート医師…。”営業部の花”と呼ばれる沙和子に憧れる真澄は、彼女を観察するようになる。すると、その秘密主義、完璧主義は、常軌を逸しているように見えた。転職、転居を繰り返す、沙和子の素顔に隠された奇妙な過去とは?完璧を目指す女。その裏側に潜む社会病理を描いた傑作。



<たーやんの独断的評価>

明野照葉氏の作品は初見。「汝の名」が現在売れていて図書館に予約をかけてあるので、その前に一冊読んでおこうと思って既に文庫化されている本作品を借りてみた。

病的なまでの完全主義者である女性が主人公。この主人公に対する読者の評価は賛否両論あるだろう。彼女を取り巻く人々の彼女に対する反応をみるだけでもいろいろな見方があることをうかがわせる。彼女の言動に共感はしないまでも、その気持ちは十分に理解できる。人生はシナリオ通りにいかないのは当たり前で、誰しも他者の言動や運命に翻弄されるが、彼女の場合は自分のシナリオを守るためには手段を選ばず、ひたすら陰で猛烈な努力をする。自身の言動等を日々自己採点し、理想の女性像を作り上げることに命を懸けてキャラクターを演じ、それでもどうにもならなくなったら人生を”リセット”する、といういかにもゲーム感覚的な生き方だ。

エンターテイメント性は高いので、読んでいるときは楽しめるだろうが、奥行きのある話ではないので、すぐに忘れてしまうような2時間ドラマ的なストーリーである。ちなみに結末は予定通りという感じだが、シナリオ通りに事が運ばなくなって、パニくってくる辺りからの展開はなかなか楽しめると思う。

最近少し話題になっている作家でもあるので、時間のある時に手に取ってみてはどうか。明野氏の描く女性はどれも本当に怖いらしい。ただ、もし同じような調子の本ばかりだったらカタメ読みはナンセンスかもしれない。あと一作くらい読んでみてから考えようと思う。