読了日:2009/10/19・2009/10/23
個人的評価:★★★★☆
書き下ろし 554ページ・501ページ(新潮社・2009/05/30)
<あらすじ> 1949年にジョージ・オーウェルは、近未来小説としての『1984』を刊行した。そして2009年、『1Q84』は逆の方向から1984年を描いた近過去小説である。そこに描かれているのは「こうであったかもしれない」世界なのだ。私たちが生きている現在が、「そうではなかったかもしれない」世界であるのと、ちょうど同じように。 Book 1 心から一歩も外に出ないものごとは、この世界にはない。心から外に出ないものごとは、そこに別の世界を作り上げていく。 Book 2 「こうであったかもしれない」過去が、その暗い鏡に浮かび上がらせるのは、「そうではなかったかもしれない」現在の姿だ。 |
村上春樹氏の5年ぶりの新作長編小説。村上春樹ファンではないので、単行本を買うつもりは当初からなく、発売から日をおかずに図書館に予約したので4カ月で手元にきた。一時は予約者が1,000人を超えたようだ。計3,780円出して買う人も多いようで、今でもTop50にランキングされているほどの売れ行きだ。世の中には「村上春樹教」の信者が実に多い。「村上春樹が書いた本は面白いに違いない」という思い込みや「ノーベル文学賞に最も近い人」という位置づけがこの過剰なまでの評判につながっているのだろう。 マーシャルアーツのインストラクターであり殺し屋でもある女性・青豆の物語と予備校の数学教師であり小説家志望の青年・天吾の物語が交互に語られていく形式でストーリーが展開していく。そして天吾を接点にして二つの物語がだんだん近づいてくる。カルト集団の描写が数多くあり、それはオウム真理教やエホバの証人を彷彿させる。 今まで読んだ村上春樹氏の作品は今一つピンとこなかったので、世間の評判はともかく、個人的にはあまり期待はしていなかった。そういう意味では、期待以上の面白さではあった。物語の世界にぐいぐいと引き込まれ、次の展開が気になってなかなか読むのをやめさせてくれない。1,000ページを超える作品にも関わらず、正味5日で読了。 ただ、個人的には、BOOK2の後半から観念的な描写が多くなり、大きな迷宮に入り込んでしまう、そしてついにはそこから抜け出せないままに物語が終わってしまい、結局この話の行先はなんだったのだろうかという根本的な疑問が残った。また時代が1984年に設定される意味は、オーウェルの『1984』とかけている以上のものを見出せない(1984年である必然性を感じないし、全体を通して時代感が希薄。)。いずれにしても、読者にゆだねられている面が大きく、読後感はすっきりせず。 今月の初めに駅の広告にBOOK3の刊行を暗示する広告が出たようだ。このモヤモヤ感は続編で解消されることになるのだろうか…。BOOK3は来夏発行予定とのこと。続編に期待を込めるという意味で★×4。 |