読了日:2009/10/15
個人的評価:★★★★☆
「小説新潮」連載 316ページ(新潮社・2005/10/20)
<あらすじ> 「いちばん大切なもの」、見つかった! わたしは「みんな」を信じない、だからあんたと一緒にいる――。足の不自由な恵美ちゃんと病気がちな由香ちゃんは、ある事件がきっかけでクラスのだれとも付き合わなくなった。学校の人気者、ブンちゃんは、デキる転校生、モトくんのことが何となく面白くない…。優等生にひねた奴。弱虫に八方美人。それぞれの物語がちりばめられた、「友だち」のほんとうの意味をさがす連作長編。 |
小学校4年生の時に交通事故で足が不自由になってしまった恵美ちゃんを中心にした10の物語からなる連作短編集。本作品は昨年文庫化もされている。 恵美ちゃんのこと、恵美ちゃんの弟・ブンちゃんのこと、恵美ちゃんの中学のクラスメイト・堀田ちゃんのこと、ブンちゃんの小学校のクラスメイト・三好くんのこと、恵美ちゃんの中学のクラスメイト・ハナちゃんのこと、ブンちゃんの部活の先輩・佐藤くんのこと、恵美ちゃんの中学のクラスメイト・西村さんのこと、ブンちゃんの親友・モトくんのこと、再び恵美ちゃんのこと・由香ちゃんとの永遠の別れ、オールキャストが出演する一軒家のレストランでもお祝い事、の10の場面が描かれている。ある人(=10番目の話で何者か明かされる)が恵美ちゃんと彼女を取り巻く人々のことを小説化するという形式をとっている。それぞれの話は単体でも十分楽しめる独立したものではあるが、それぞれの物語が紡がれて大きな一つの物語を作っている。 心が洗われるような重松流のいい話がたくさんある。恵美ちゃんが無愛想に発した由香ちゃんとのことを言葉にしたものの中でいくつか印象的なものを挙げておこう。「わたしは、一緒にいなくても寂しくない相手のこと、友だちって思うけど」、「いなくなっても一生忘れない友だちが、一人、いればいい」、「一生忘れたくないから、たくさん思い出、ほしい」。不特定多数の人とうまくやらなければならないというプレッシャーにさらされているのは子供も大人も同じ。孤独になってしまうのが怖いから誰もが「みんなぼっち」という不確かな安全地帯に逃げ込み、ほんとうの「友だち」とは何かを見失いがちだ。 10番目の話で各主人公たちが勢揃いするのが不自然な設定に思えるので、それだけが惜しいところだ。★×4にしてあるが、内容的には十分★×5だと言える。「友だち」とは何か、自分らしく生きることとは何か、を改めて考えさせられる話だ。やはり重松さんは読者を惹きつけるのが上手い。よくもこれだけたくさんヒューマンドラマを書けるものだと感心する。 |