読了日:2009/09/27
個人的評価:★★☆☆☆
「小説すばる」連載 331ページ(集英社・2009/05/30)
<あらすじ> 「小説は悪魔ですか、それとも作家が悪魔ですか?」――『OUT』より12年目の衝撃作!彼は、小説に命を懸ける、と何度も言った。担当編集者であり、恋人でもあった青司と激烈な別れの後、小説家・鈴木タマキは恋愛における抹殺をテーマに「淫」という小説を書こうとしていた。抹殺といっても本物の死ではない。無視、放置、逐電など、自分の都合で相手との関係を断ち、相手の心を「殺す」ことと規定した。主人公は緑川未来男が書いた『無垢人』という小説の中に登場する「○子」である。緑川には愛人がいて、その存在を知った妻は激しく嫉妬し、夫婦の闘争のあげく幼い末息子が事故死した。『無垢人』はその修羅の日々を赤裸々に書いた小説だった。魂を凍らせる、恋愛「抹殺」小説。 |
桐野夏生氏の最新作。図書館に予約して4か月かかってようやく手元に。ごく普通の主婦が殺人を犯してしまう「OUT」の続編として「IN」と題されたものなのかと思っていたが、本作品は全くの無関係。読み始めて今までの桐野作品と違うなという違和感があってストーリーにのめり込めず、その印象が変わらぬまま読了。これはフィクションというよりも桐野氏自身の私小説的なものだと理解すればよいのだろうか。 いつものどうしようもないダークさとはテイストが全く異なる作品。もしかしたら、単に私が読み取れなかっただけなのかもしれないが、「らしくない」としか思えなかった。正直言って、桐野氏で初めてハズレを引いてしまったような感じだ。特に、緑川と○子との関係性を投影して描写している主人公と青司との関係についてかなりのページを割いているが、どういう意味をもっているのかよく分からなかった。これといって印象的な表現や場面も見いだせず、坦々と読み進めることはしんどく、何とか読了したという感じだ。読み返してみると桐野氏がどういう想いで書いたのか見えてくるのかもしれないが、再読したいという気にはさせてくれない…。 |