読了日:2009/09/15
個人的評価:★★☆☆☆
書き下ろし 302ページ(新潮社・1996/03/20)
<あらすじ> 「一ヵ月8kg減で、誰もが理想体重に」ダイエット美女を決める最終選考まで、あと二ヵ月。夏のヒロインを選ぶコンテストの幕が開いた。今度こそ、絶対に生まれ変わってみせる。痩せてみせるわ。たとえ「私」を殺してでも…。「あなたは私のことを何も知らない。愛してたなんて嘘よ」そう言い捨てて、恋人は姿を消した。手掛かりを捜すうちに浮かび上がる、恋人の偽りに満ちた過去と、ダイエットコンテストの謎。もし、痩せられなければ、私には、帰るところがないの…。「もう、駄目かもしれない…。今度リバウンドしたら、その時、私は…」デビュー作『僕を殺した女』に続く驚異の第二作。華やかなダイエットコンテストに渦巻く謎と、深まる狂気を描く本格的心理サスペンス。 |
北川歩実氏の作品は初見。プロフィールは性別・年齢を含めて公表されていない謎の作家である。現在、「金のゆりかご」という同氏の文庫本が売れているようなので、初期の作品を図書館で借りてみた。本作品は単行本のみ。2段組の小さい字で1ページにぎっしり文字が詰まっているので、300ページとはいえ、かなりの長編だ。 女性の狂信的なダイエットをモチーフにしたストーリーで、女性たちの心理を描くサスペンスだ。失踪した恋人・美咲を追い求めて調査をする推理作家の菅見英晴と、エステサロン主催のスリムコンテストに出場するために過激なダイエットを繰りかえす桐原千夏の目線で交互に描かれて物語が展開していく。 登場する女性たちは「痩せていて美しくないと男性から愛されない」という妄想に凝り固まっていて、そこまでやるかあという狂気のダイエットをする、エステサロンがそれに拍車をかけ、食べては嘔吐を繰り返す、下剤・利尿剤、さらには覚醒剤を使ってまで痩せようとする。 読者をグイグイと惹き付ける北川氏の筆力はなかなかのものだ。ただ、内容が病的なまでに自分の体を嫌悪して拒食症になったり、自虐的な行為を繰り返す女性たちの話なので、読んでいて気分の良いものではない。 一貫して同じような調子で、大きな盛り上がりに欠けるため、中盤から終盤にかけてダレてくる、結末も若干期待外れの感があり(意図的に隠されていた事実が終盤で一気に明らかになる…これはどんでん返しとは言わない!)、読後感もあまりよくない。ダイエット願望がある女性には、この手の話は身につまされ、ホントに恐ろしいかもしれない。私などにとっては全く理解できない世界の話なので、リアリティを感じないが…。 |