金原ひとみ「蛇にピアス」

読了日:2009/09/12
個人的評価:★★☆☆☆
「すばる」掲載 124ページ(集英社・2004/01/10)


<あらすじ>

ピアッシングや刺青などの身体改造を題材に、現代の若者の心に潜む不気味な影と深い悲しみを、大胆な筆致で捉えた問題作である。埋め込んだピアスのサイズを大きくしていきながら、徐々に舌を裂いていくスプリットタン、背中一面に施される刺青、SM的なセックスシーン。迫力に満ちた描写の一方で、それを他人ごとのように冷めた視線で眺めている主人公の姿が印象的だ。



<たーやんの独断的評価>

第130回芥川賞受賞作品。こういう作品が芥川賞をとるというのはカルチャーショックだ。これって純文学なのか?最近の芥川賞の選考基準ってどうなっているのか??川上未映子氏の「乳と卵」といい…(この人の作品は字面を目で追うだけで精いっぱい、全く内容が頭に入ってこず、冒頭部でリタイヤした)。おそらく、芥川賞をとっていなければ手にすることはなかった作品だと思う。

いわゆるアングラ系のネタをテーマにしているが、グロテスクさが中途半端だ。描かれている内容は自身の経験に基づいたものなのか、取材によって知りえたことなのか分からないが、奇を衒って過激さをアピールしているだけに過ぎないような感じがした。おそらく読了後には何も残らないだろう。

ただ、人といかに違うことをするかというところに価値を見出している登場人物たちとは対極にいるような自分にとっては、描かれている世界はとても新鮮で、共感はできないまでもそれなりに興味をもってさらっと読むことができた。同時に直木賞をとった綿矢りさ氏の「蹴りたい背中」に比べれば、面白かったと思う。まあどっちもどっちだが…。1時間強で読了できると思うので、興味があれば読んでみたら如何か。村上龍氏の作品が好きな人は楽しめるのではないか。世間のレビューを見るとかなり辛辣だが(無理もないと思うが…)、まだ20歳の時の作品なので、今後どういう風に脱皮していくかに期待したい。