読了日:2009/09/02
個人的評価:★★★☆☆
「小説推理」連載 365ページ(双葉社・2008/12/14)
<あらすじ> 東京の文教地区の町で出会った5人の母親。育児を通してしだいに心を許しあうが、いつしかその関係性は変容していた。―あの人たちと離れればいい。なぜ私を置いてゆくの。そうだ、終わらせなきゃ。心の声は幾重にもせめぎあい、壊れた日々の亀裂へと追いつめられてゆく。 |
図書館で予約をかけてから半年待ち。角田光代氏の衝撃の母子小説。都内で10年前に発生した主婦による幼児殺害事件、いわゆる「お受験殺人」がモチーフになっている。 それぞれの子供を介して、5人の女が知り合う。ヤンキーまがいの服装をする繭子、依存心の強い容子、スポーツクラブに通う千花、ボランティアのグループに所属する瞳、編集者と不倫中のかおりが、文教地区のとある町で出会い、育児を通して交流を深めていく。しかし生まれ育った家庭環境も、経済的基盤も、さらには子供の能力も異なるのに、ウチはウチと思えず比較してしまうから対立や葛藤や嫌悪感が生まれる。やがて仲間からの排除という形がとられ、はみだされたものは次第に追い詰められていく。 5人の母親たちは互いに嫉妬したり、つまらない優越感に浸ったり、出し抜いたりと醜い行為を繰り返す。そして関係が壊れていくに従って相互に負の感情をヒートアップさせていく。それでも視野が狭くなってしまっているためか、この閉鎖的な世界に居続けようとする。彼らは誰かと繋がっていないと不安でたまらないのだ。互いのベクトルの方向が一致せず、殺意が芽生えるほどに憎悪は燃え上がる。「あの人さえいなければ、あの子さえいなければ…」と狂気に拍車がかかっていく。 心理状態や行動が怖いくらいリアルに描かれているので、就学前の子供をもつ専業主婦にはインパクトが強すぎるかもしれない。他人事として読めないと思うのであまりおススメできない。それにしても、子供のこととなるとここまで人を変えてしまうものなのか??これって誰でもなりうることなのだろうか??一人くらい冷静に現状を把握してうまく立ち回る人がいてもよさそうなものだが…。実際、ここまで愚かじゃないだろう、フィクションだけにデフォルメされているのだろうと思う。 5人のそれぞれの目線で順番に描写されながら、ストーリーが展開していく構成をとっている。目まぐるしく語り手が変わっていくし、とにかく登場人物が多い。それぞれには家族がいるので、キャラクターの特徴を理解して慣れてくるまでは読みづらいかもしれない。 ワイドショー的なゴシップネタや昼ドラのようなドロドロ感が好きな人にはいいかもしれないが、精神衛生上いいとは言えない話だ。読了後に少しブルーになるかもしれない。 |