東野圭吾「パラドックス13」

読了日:2009/08/26
個人的評価:★★★☆☆
「サンデー毎日」連載 474ページ(毎日新聞社・2009/04/15)


<あらすじ>

運命の13秒。人々はどこへ消えたのか?
13時13分、突如、想像を絶する過酷な世界が出現した。陥没する道路。炎を上げる車両。崩れ落ちるビルディング。破壊されていく東京に残されたのはわずか13人。なぜ彼らだけがここにいるのか。彼らを襲った”P−13現象”とは何か。生き延びていくために、今、この世界の数学的矛盾(パラドックス)を読み解かなければならない!
張りめぐらされた壮大なトリック。論理と倫理の狭間でくり広げられる、究極の人間ドラマ。”奇跡”のラストまで1秒も目が離せない、東野圭吾エンターテインメントの最高傑作!



<たーやんの独断的評価>

東野圭吾氏の最新刊。図書館新着とほぼ同時に予約して4か月待ち。東野氏は人気作家なので、新刊はなかなか借りられない…。

これまでの作品とは異なるSF風ヒューマンドラマ。P−13現象というブラックホールによるエネルギーの波が地球を襲い、それにより13秒だけ時間がずれる、その結果、生物が消滅し、なぜか生き残った13人のサバイバル生活が始まるという内容。

大地震、津波、豪雨などの過酷な自然現象に加えて、インフルエンザが彼らに襲いかかる。自然の猛威で破壊しつくされた東京、動き回るのも儘ならない中、被害を免れた総理官邸に辿り着く。しかし、備蓄食糧もいつかは尽きる、この世界には自分たちしかおらず、生き抜くためにはどうすべきか、人類存続のためどうすべきか、など彼らの前に様々な問題が立ちはだかり、つらい決断も求められる…。

P−13現象というものが理論上、現実に起こりうるものかということが理解できなかったため、この現象自体にリアリティを感じない。そうなると、その後に出現する想像を絶する過酷な世界がすべてウソっぽく感じてしまう。またネタバレになるので内容には触れないが、結末にはちょっとがっかりさせられた…。東野氏の作品に対する期待度が高い分、どうしても評価が辛くなってしまうのかもしれないので、その分差し引いてもらったほうがよいとは覆う…。やはり、相変わらず読みやすさは天下一品で、本作品は少々長いが短時間で読了できる。

サバイバルの過程はハラハラドキドキしながら楽しんで読める。上に書いたことと矛盾するかもしれないが、SF小説だと思えば、あまり現実感もないため、シリアスにならずに読める。困難を乗り越えていく勇者がキャラクターになっているゲームの感覚で読み進めていくことができるだろう。