荻原浩「オロロ畑でつかまえて」

読了日:2009/08/12
個人的評価:★★★★☆
「小説すばる」掲載 225ページ(集英社・1998/01/10)


<あらすじ>

《奥羽山脈の一角、日本の最後の秘境といわれる大牛山(2238メートル)の山麓に、サルノコシカケのようにはりついた寒村》で《人口はわずか三百人》、《主な産物は、カンピョウ、人参、オロロ豆、ヘラチョンペ》の牛穴村。

 そんな超過疎の村の青年会―といってもわずか8名、大半は30過ぎ―の面々が、村おこしのために立ち上がる。しかし手を組んだ相手は倒産寸前の広告代理店、ユニバーサル広告社。彼らが考えた村おこし作戦「牛穴村 新発売キャンペーン」とは――!?



<たーやんの独断的評価>

第10回小説すばる新人賞受賞作で、荻原氏が作家として世に出るきっかけとなった作品。この本、かなーり笑える。非常に内容は下らないが、基本的な笑いのツボをおさえており、抱腹絶倒という謳い文句に偽りなし!電車の中で読む場合にはご注意を!200ページ強の長さで、しかも読みやすいので、肩の力を抜いてさらっと一日で読める。ユーモアが至る所にちりばめられており、荻原氏のセンスと才能が光っている。

ユーモア小説ばかりかといえば、映画で評判になっていた「明日の記憶」のようなシリアスな作品も数々書いているからすごい。守備範囲が広さに脱帽。前のレビューにも書いたことがあるが、奥田英朗氏と傾向やテイストが近いのかもしれない。直木賞受賞もさほど遠くない将来に実現するかもしれない。

荻原氏が作家になる前に広告代理店に勤めていたこともあり、広告業界の裏話的な描写も興味深い。そう言えば、ストーリー上の関連は全くないが、先日読んだ「神様からひと言」にもユニバーサル広告社が出てきていた。これは何か意味があるのかな??なお、本作品の続編にあたるのが「なかよし小鳩組」だそうだ。機会を見て読んでみることにしよう。