大手広告代理店を辞め、「珠川食品」に再就職した佐倉凉平。入社早々、販売会議でトラブルを起こし、リストラ要員収容所と恐れられる「お客様相談室」へ異動となった。クレーム処理に奔走する凉平。実は、プライベートでも半年前に女に逃げられていた。ハードな日々を生きる彼の奮闘を、神様は見てくれているやいなや…。サラリーマンに元気をくれる傑作長編小説。
読了日:2009/08/02
個人的評価:★★★★☆
449ページ(光文社文庫・2005/03/20)
<あらすじ> 大手広告代理店を辞め、「珠川食品」に再就職した佐倉凉平。入社早々、販売会議でトラブルを起こし、リストラ要員収容所と恐れられる「お客様相談室」へ異動となった。クレーム処理に奔走する凉平。実は、プライベートでも半年前に女に逃げられていた。ハードな日々を生きる彼の奮闘を、神様は見てくれているやいなや…。サラリーマンに元気をくれる傑作長編小説。
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インスタントラーメンが主力商品である食品メーカーのリスクマネジメントを描いたユーモアたっぷりの物語。冒頭に「TF01LL」、「RM」、「スーパージョイント製法」など訳の分からない単語が立て続けに出てきて、とっつきにくい感じがするが、心配ご無用。あっという間に物語の世界に引き込まれる。社内会議、クレーム対応、会社の私物化の実態等がリアルに描かれており、民間企業の様子を知らない私にとってはこういう世界はとても新鮮だ。そうは言っても、一族で組織を牛耳っている古い体質の会社のことなので、大企業の実態とは全然異なるのだろうが…。同時並行的に凉平の昔の恋人との問題も展開していく。 「お客様相談室」での凉平の上司である篠崎が型破りのいいキャラだ。ただのやる気のないおっさんかと思いきや、クレーム対応のプロ中のプロ。処理していく姿は実に鮮やかで、実務に応用できそうな感じすらする。凉平は篠崎に振り回されながらも、クレーム対応のノウハウを学んでいき、少しずつ成長していく姿を読者は応援したくなるだろう。 読後感は爽やかで読者の溜飲は下がるだろうが、結末はありきたりの勧善懲悪で、期待以上のものはないかもしれない。また、凉平が公園で出会う「ジョン」=神様?はストーリー上、浮いてしまっていると感じたのは私だけだろうか。これって必要なキャラか??しかもそれが題名についてしまっているのが全く解せない。 ただ、エンターテイメント性は非常に高い。荻原氏の作品はテイストやテーマが多種多様であり、ユーモアたっぷりの作品を書くかと思えば、シリアスな本格的大衆文学を書くこともあるという点が奥田英朗氏とよく似ている。今回が4作目、また別の作品を読んでみようかな。次は「僕たちの戦争」の予定。 |