恋人のキタザワに誘われ、同居することになった南。ところが、そのマンションにはキタザワの遠い親戚マリコとその恋人サトシが住んでいた…。成り行きまかせで始まった男女4人の奇妙な共同生活を描く表題作ほか、別れの予感を抱えた若い夫婦があてのないアジア放浪に出る「かかとのしたの空」を収録。今を生きる若者たちを包む、明るい孤独とやるせない心をうつしだす作品集。
読了日:2009/07/26
個人的評価:★★★☆☆
小説「すばる」連載 235ページ(集英社・1998/11/10)
<あらすじ> 恋人のキタザワに誘われ、同居することになった南。ところが、そのマンションにはキタザワの遠い親戚マリコとその恋人サトシが住んでいた…。成り行きまかせで始まった男女4人の奇妙な共同生活を描く表題作ほか、別れの予感を抱えた若い夫婦があてのないアジア放浪に出る「かかとのしたの空」を収録。今を生きる若者たちを包む、明るい孤独とやるせない心をうつしだす作品集。
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「みどりの月」、「かかとのしたの空」の2篇からなる作品集。だいぶ前に評判になったのを覚えていて、図書館で借りてみた。いずれも登場人物の中では唯一まともな感覚の持ち主である二人の女性の目線でストーリーが描かれていく。 この2つの作品は全く独立したものだと思っていたが、幼いころは何にでも関心を持ち、何でも器用にできる天才肌だったにもかかわらず、1年もすると飽きてしまい何事も長続きしない、また母親から過度な干渉を受けており、高校生になる頃には何もできない無気力な人間になってしまった女性・マリコがどちらの作品にも登場するという共通項がある。「みどりの月」では、どうしようもなく無責任で何を考えているのかさっぱり分からない、ひたすら現実逃避をするキタザワの戸籍上の妻として、「かかとのしたの空」では、その後思いつきで旅立ったタイで歌を歌って小遣いを稼ぐ奇妙な女性として。語り部となっている女性を除いて、マリコも含めた登場人物は揃いも揃ってどうしようもない、まともに日常生活を送れないほどだらしない。理解を超えた言動に不愉快を通り越して、呆気にとられてしまう。 登場人物はマリコを除いて完全に入れ替わる。時系列的には、「みどりの月」の後日談が「かかしのしたの空」である。「みどりの月」の奇妙な共同生活には理解に苦しむが、奮闘する南を応援しながら読み進めていくことだろう。「かかしのしたの空」は全体的に冗長で淡々としており、読後感もすっきりしない。2篇目は蛇足だったのでは? |