山田悠介「ライブ」

読了日:2009/07/15
個人的評価:★★★★☆
293ページ(角川書店・2005/06/10)


<あらすじ>

感染したら死に至る奇病”ドゥーム・ウィルス”。日本にそれが蔓延するなか、あるはずのない特効薬が貰えると奇妙な噂がネットに広がる。感染した母親を持つ田村直人は、半信半疑で集合場所へ赴くが、特効薬はトライアスロンを完走しなければ貰えないという! スタート地点のお台場からテレビで生放送されるレース、残酷なトラップに脱落していく選手たち。愛する者を救うため、直人は最悪のデスレースを走りきれるのか!?



<たーやんの独断的評価>


いつもながら独特の世界が描かれていて、あっという間に読者をこの世界へいざなう。夢中で一気に読了してしまった。内容は実に薄いのであっという間に読了できる。単なる暇つぶし程度と考えた方がよい。「リアル鬼ごっこ」や「モニタールーム」と同様、登場人物が盲目的に一つの目標に向かって突き進む、その間に様々な困難が立ちはだかる、言わば、”活字版RPG”のようなものだ。

途中に仕掛けられているワナも期待外れだったし、結末は「これだけ引っ張って急にそういう展開かよ!」という唐突さが否めない。また、このレースへの参加を強いられる人々の”従順さ”、警察が一切介入しないところなど、どう考えても設定上無理があり、リアリティに欠ける。

ただ、個人的には、お台場から熱海までの主要幹線道路をマラソン、バイクで、熱海から熱海沖の架空の島「烏丸島(からすまとう)」までをスイムで、というトライアスロンを舞台にしている設定が大変興味深い。ストーリーとしては三流で★3つ以下の評価だと思うが、舞台設定と読みやすさをもって、★4つにしておきたい。