国連の難民事業に携わる里佳は、上司であるエドと恋愛し、7年間の結婚生活の末、2年前に離婚した。そのエドがアフガニスタンで死に、立ち直れないでいる里佳を、アフガンでエドが救った難民の少女に会ったという記者が訪ねてくる…。 表題作他、我儘なオーナーパティシエのために最高の器を捜し求める秘書、捨て犬の世話をするボランティア、仏像に魅入られた修復師など、市井でこつこつと懸命に生きる人たちを描く、ハートウォーミングでちょっぴり泣ける短編集。
読了日:2009/07/14
個人的評価:★★★★☆
「別冊文藝春秋」連載 313ページ(文藝春秋・2006/05/30)
<あらすじ> 国連の難民事業に携わる里佳は、上司であるエドと恋愛し、7年間の結婚生活の末、2年前に離婚した。そのエドがアフガニスタンで死に、立ち直れないでいる里佳を、アフガンでエドが救った難民の少女に会ったという記者が訪ねてくる…。 表題作他、我儘なオーナーパティシエのために最高の器を捜し求める秘書、捨て犬の世話をするボランティア、仏像に魅入られた修復師など、市井でこつこつと懸命に生きる人たちを描く、ハートウォーミングでちょっぴり泣ける短編集。
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「器を探して」、「犬の散歩」、「守護神」、「鐘の音」、「ジェネレーションX」、「風に舞い上がるビニールシート」の6篇からなる短編集。表題作は第135回(2006年上半期)直木賞受賞作であり、つい先日、NHKの土曜ドラマ(全5回)でTV放映されている。 森絵都氏の作品を初めて読んだ。直木賞を受賞した表題作は言うまでもなく、その他5篇とも短編とは思えないほど、奥行きのある大作である。これをダラダラと長編にしなかったところがある意味潔いと言えるのかもしれない。「ジェネレーションX」と表題作はこの中でも秀逸である。陶磁器、捨て犬保護、日本の古典文学、仏像修復、クレーム処理、難民事業と幅広い題材を扱っており、それぞれの主人公達は自分らしさを失わずに何かにこだわりを持ち続けている。プラス思考でひたむきに頑張っている姿が描かれており、主人公の価値観や人生観に共感できるかどうかともかくとして、きっと読者を元気にしてくれることだろう。読後感は極めて爽やか。今度は長編を読んでみたいところだ。 |