浅田次郎「中原の虹(三)」

読了日:2009/07/02
個人的評価:全巻読了後に評価
「小説現代」連載 376ページ(講談社・2007/05/25)


<あらすじ>

革命の果てに、
北京、落城す。

あまりに幼き最後の皇帝。西太后の遺志は全うされるのか。
混沌の末に見える希望の光。激動の中国歴史ロマン、白熱!

革命だと?そんなものァ、俺様の知ったこっちゃねえ」
相次ぐ革命勢力の蜂起に、一度は追放した袁世凱を呼び戻す皇族。
だが俗物、袁世凱には大いなる野望があった。
満洲では張作霖が、まったく独自の勢力を形成していき――。

龍玉を握る張作霖は乱世を突き進み、
新しい時代が、強き者の手で拓かれる。



<たーやんの独断的評価>

光緒帝、西太后が相次いで崩御し、醇親王や鎮国公や徐世昌が何とか幼い皇帝を支えるも、すでに清王朝は末期症状で迷走を続ける。皇族、官僚達は袁世凱を放逐したために軍を統制することができなくなり、結局、袁を呼び戻すことになる。彼はあっさりと内閣総理大臣就任の詔勅をとりつけてしまい、それも束の間、自分の(勘違いした)野望を満たすために皇帝に退位をせまる。ついに清朝滅亡し、中華民国が建国された。どさくさにまぎれて袁世凱は臨時大総統の椅子を手にする。

本巻は、主要な登場人物の出番が少なく、最終巻への橋渡し的な展開、悪く言えば、本流から離れた展開が延々と書かれている場面が多い。やはり西太后が亡き後、いまいちストーリーの迫力に欠ける気がする。なんと言っても、「蒼穹の昴」からずっと李春雲と並んで主役を張ってきたのだから…。今後のメインキャストは袁世凱のような小物ではなく、張作霖、李春雲、李春雷、梁文秀でなければならない。最終巻でどういう展開になるのか分からないが、本巻は結末に向かうための伏線が坦々と描かれているのだと思いたい。彼らの人生の軌跡はどこで接することになるのか楽しみだ。

それにしても、宣統帝・溥儀が退位を受け入れる場面で、幼帝が判断できないから?西太后の存在が大きすぎるから?と言っても、西太后の亡霊が出てきて、その考えを皇帝の口を借りて言わせしめるというのはいただけない。こんな大事な場面をこういう形にしてしまってよいのか?もったいない展開だ…。