浅田次郎「中原の虹(一)」

読了日:2009/06/24
個人的評価:全巻読了後に評価
「小説現代」連載 313ページ(講談社・2006/09/25)


<あらすじ>

英雄たちが、大地を駆ける。隠された王者の証「龍玉」を求めて、壮大な冒険が、いま幕を開ける。人間の強さと美しさを描ききった中国歴史小説、刊行開始!
「鬼でも仏でもねえ。俺様は、張作霖だ」
「汝、満州の覇者となれ」と予言を受けた貧しき青年、張作霖。のちに満州馬賊の長となるその男は、大いなる国の未来を、手に入れるのか。
栄華を誇った王朝に落日が迫り、新たなる英雄が生まれる。



<たーやんの独断的評価>

以前から読もうと思って忘れていた作品。代表作「蒼穹の昴」の続編にあたる。また清朝末期の光緒帝と妃との悲恋を描いた「珍妃の井戸」も内容的に関連する。そのため、本作品は読むにあたっては、まずはこれらの作品を読むことをおススメする。特に「蒼穹の昴」と登場人物も重なっており、その流れを大きく汲んでいる。

本作品は「任侠もの」に分類される長編歴史小説である。舞台は「蒼穹の昴」から少しだけ時代が下った20世紀初頭の中国満州地方。「蒼穹の昴」の主人公の一人である李春雲(春児)の実兄・李春雷、のちに満州軍閥の長となる張作霖、清の太祖・ヌルハチ、東三省総督・徐世昌などの目線で物語が展開していく。「蒼穹の昴」でおなじみの西太后、李春雲、光緒帝、袁世凱もストーリー上のキーパーソンとして登場する。

「龍玉」をめぐって、時代が明朝末期になったり清朝末期になったりと、なかなかストーリーに集中できなかったが、ようやく第一巻で壮大な導入部が終わり、これからが本番。浅田氏の清朝末期の作品は非常に定評があるので今後の展開が楽しみ。「蒼穹の昴」のストーリーをかなり忘れてしまっているのが誠に残念。ちょっと時間が空きすぎたかな…。