奥田英朗「町長選挙」

読了日:2009/06/07
個人的評価:★★★★☆
オール讀物269ページ(文春文庫)


<あらすじ>

町営の診療所しかない都下の離れ小島に赴任することになった、トンデモ精神科医の伊良部。そこは住民の勢力を二分する町長選挙の真っ最中で、なんとか伊良部を自陣営に取り込もうとする住民たちの攻勢に、さすがの伊良部も圧倒されて…なんと引きこもりに!?泣く子も黙る伊良部の暴走が止まらない、絶好調シリーズ第3弾。



<たーやんの独断的評価>

精神科医・伊良部先生シリーズの「イン・ザ・プール」、「空中ブランコ」に次ぐ第3弾。「オーナー」、「アンポンマン」、「カリスマ稼業」、「町長選挙」の4篇からなる。シリーズ前2作の主人公は明らかにフィクション上の人物であったが、本作品の「町長選挙」以外の主人公は明らかにこの人でしょうって分かる。「オーナー」の大日本新聞社の社長・田辺満雄=ナベ○ネだし、「アンポンマン」のIT企業社長・安保貴明=ホリ○モンだし、「カリスマ稼業」の女優・白木カオル=黒○瞳だ。ここまで揶揄して書いてしまって名誉棄損とかで訴えられないだろうかと心配になるくらい。でも、いかにもありそうな話でホントに笑える。最終的には悪意を感じさせず、読後感もよいから、問題にはなっていないのかもしれない。ただこの3篇については、それぞれのキャラが濃いので、その分伊良部先生の存在感が薄くなってしまっている。

表題になっている「町長選挙」が一番ボリュームもあり面白い。東京都のとある離島(千寿島)で4年に1回行われる賄賂あり、公務員の選挙活動ありと、公職選挙法に違反しまくりの町長選挙を舞台にしたそれぞれの人間模様。それでも、誰もが自分たちの島を愛しているのだというくだりはホロリとくる。地理的には八丈島が舞台になっていると思われるが、ストーリーのモデルは鹿児島県の徳之島の町長選挙らしい。

くれぐれも電車の中で読まないように!声を出して笑ってしまう可能性があり、変人だと思われるかもしれない。落ち込んでいるときとか気分が暗くなっているときにはおススメの本だ。