我が子を校内で亡くした女性教師が、終業式のHRで犯人である少年を指し示す。ひとつの事件をモノローグ形式で「級友」「犯人」「犯人の家族」から、それぞれ語らせ真相に迫る。選考委員全員を唸らせた新人離れした圧倒的な筆力と、伏線が鏤められた緻密な構成力は、デビュー作とは思えぬ完成度である。
読了日:2009/06/02
個人的評価:★★★☆☆
書き下ろし・小説推理連載268ページ(双葉社)
<あらすじ> 我が子を校内で亡くした女性教師が、終業式のHRで犯人である少年を指し示す。ひとつの事件をモノローグ形式で「級友」「犯人」「犯人の家族」から、それぞれ語らせ真相に迫る。選考委員全員を唸らせた新人離れした圧倒的な筆力と、伏線が鏤められた緻密な構成力は、デビュー作とは思えぬ完成度である。 |
本作品は、第一章「聖職者」が第29回小説推理新人賞を受賞し、それを長編化したもの。本屋でかなり宣伝されていたし、単行本にもかかわらず飛ぶように売れていたようなので、若干出遅れ感もありつつ、図書館の予約をかけて、7か月待ってようやく手元に来た本。2009年本屋大賞受賞作。 第一章「聖職者」は担任、第二章「殉教者」は学級委員、第三章「慈愛者」は少年Bの姉・少年Bの母の日記、第四章「求道者」は少年B、第五章「伝道者」は少年Aの目線でそれぞれ描かれている。扱われているテーマはありきたりだが、少年の心の闇・集団心理など。 本作品がデビュー作だが、読者を一気にストーリーの世界に引き込むだけの展開、構成のうまさがある。第一章の担任のモノローグでぐっと読者を引きよせ、章末で出てくる告白に衝撃を受ける。その後、第一章で解き明かされなかった事実が生徒や家族のモノローグを通じて明らかになってくる。ただ、第一章でほとんどストーリーとしては完成してしまっており、第二章以降は若干蛇足的な印象も残る。 ラストは元担任からの教訓めいた形で終わるのかと思いきや、最後の最後でさらなる復讐が…。これだけ救いのない後味の悪い小説もそうそうないが、それだけストーリーの中に自分自身が引き込まれた証左だろう。 |