浅田次郎「五郎治殿御始末」

読了日:2009/05/31
個人的評価:★★☆☆☆
旅行読売等連載231ページ(中央公論新社)


<あらすじ>

新しき世を生きよ

武士という職業が消えた――
明治維新の大失業にもみずからの誇りを貫いた侍たちの物語

五郎治は始末屋であった。藩の始末をし、家の始末をし、最も苦慮したわしの始末もどうにか果たし、ついにはこのうえ望むべくもない形で、おのれの身の始末もした。
男の始末とは、そういうものでなければならぬ。けっして逃げず、後戻りもせず、能う限りの最善の方法で、すべての始末をつけなければならぬ。(「五郎治殿御始末」本文より)



<たーやんの独断的評価>

浅田次郎氏の短編集は初見。「椿寺まで」、「箱館証文」、「西を向く侍」、「遠い砲音」、「柘榴坂の仇討」、「五郎治殿御始末」の6篇からなる。

浅田氏の作品で清朝末期を舞台とする時代物以外は読むのは初めて。本作品はいずれも、時代が江戸から明治へと変わり、日本古来のものを投げ捨てて、西洋に倣って近代化の道を歩み始めた頃が舞台となっている。士農工商という身分制度がなくなった中で時代に取り残された元武士たちの生きざまが描かれている。

明治維新後の革命的な制度の変革は、今日まで当たり前だったことが突然なくなってしまったり、禁止されてしまう、元武士たちはその変わっていく様をどうすることもできない、その苦悩や悲しみが切々と描かれている。結局は、さまざまな新たなものを受け入れていかざるを得ないが、それでも武士としての誇りは失わない。

私自身は今まで読んだ浅田氏の作品の中では楽しめなかった。それも、自分自身の精神状態のせいであまり本に集中できなかったためかもしれない。そのため★×2の評価にしているが、ネット上の評価ではもっとずっとよいので、時代背景や明治維新後の元武士たちの生活・生きざまに興味があれば読んでみては如何か。個人的には、「西を向く侍」、「五郎治殿御始末」がよいと思う。