読了日:2009/05/03
個人的評価:★★★★☆
小説すばる連載267ページ(集英社)
舞台は、伝統ある男子校の寮「松籟館」。
冬休みを迎え、多くが帰省していく中、事情を抱えた4人の少年が居残りを決めた。 ひとけのない古い寮で、4人だけの自由で孤独な休暇がはじまる。 そしてイブの晩の「告白」ゲームをきっかけに起きる事件。日を追うごとに深まる謎。 やがて、それぞれが隠していた「秘密」が明らかになっていく。 驚きと感動に満ちた7日間を描く青春グラフティ。 |
専業作家になる直前に書いた青春小説で今まで私が読んだ恩田氏の作品の中では異色。同じ青春モノでも「真夜中のピクニック」とはだいぶテイストが違う。おそらく恩田ファンにとっては、いまいちなのかもしれないが、私はどちらかと言うと、いつもの「メルヘンチック」な感じよりも本作品のようなもののほうが面白く読めた。 それぞれ4人のキャラや心理状態が丁寧に描かれていて、毎晩繰り広げられる「告白」ゲームでどんな話が飛び出すのか大変興味深い。しかし、女性が男子校の寮生活を描くのはやはり限界があるのではないかと…。私も男子校だったから分かるが、男4人だけの生活としては現実味がないし、なんだか「きれいに」作られているような感じがする。まず、朝食・夕食自炊というのはまずあり得ない。それに、なんか理由をつけて毎晩のように飲むというのは当たりだと思うが、「告白」ゲームなどはまずやらないだろう。 ちなみに、ストーリーは菱川美国の目線で展開していくので、彼が主人公なのだろうが、この中では一見もっともノーマルであまり存在感がない。個人的には、瀬戸統が一番面白いキャラだと思うが…。恩田さんも彼に一番愛情を注いで描いていたようだ。 男子学生が生活を共にしているからこそ芽生える独特の友情がよく描かれていて、良くも悪くもほのぼの系の青春モノだ(とは言っても4人が告白する内容は結構重い)。男女を問わず面白く読める作品だと思う。読後感は爽やか。 |