東野圭吾「ガリレオの苦悩」

読了日:2009/04/11
個人的評価:★★★★☆
オール讀物等連載344ページ(文藝春秋)


<あらすじ>

湯川の頭脳に挑戦してくる犯人たち。
科学を雑人の道具に使う人間は許さない。―ー絶対に。

落下る(おちる) アイデアがあるなら試せばいい。価値のない実験なんかない
操縦る(あやつる) 人の心も科学です。とても奥深い。
密室る(とじる) 人間が生み出した謎を解くには、人間のことを知っておく必要がある
指標る(しめす) 神秘的なものを否定するのが科学の目的じゃない
攪乱す(みだす) 魔法なんてものは、この世に存在しない



<たーやんの独断的評価>

ガリレオシリーズの「探偵ガリレオ」、「予知夢」、「容疑者Xの献身」に続いて「聖女の救済」(これだけ未読)と同時に出された第4弾。「落下る」、「操縦る」、「密室る」、「指標る」、「攪乱す」の5編からなる短編ミステリー。
今回のシリーズから、新顔である若手女性刑事の内海薫が登場する。てっきり、TVやドラマで登場してきた柴崎コウの役を小説で後追いで登場させたのかと思っていたが、実は映像化される1年前に雑誌の連載で登場していたらしい。

ガリレオシリーズの中では、「容疑者Xの献身」と「聖女の救済」以外は短編ミステリー。主人公のガリレオこと湯川が不可解な事件を科学的に解いていく。私はガリレオはTVも映画も見ていないが、見た方にとってはイメージが固まってしまうようだ。映像恐るべし。ガリレオシリーズの特徴としては、当て字のような読み方をさせる動詞が表題についている、主人公がガリレオにも関わらず、視点は主人公以外である点である(本作は大半が内海刑事の視点)。また、東野氏が電気工学科卒業ということもあり、科学や物理の知識が事件のカギを解く場合が多いが、難しい話は一切なく、さらさらと読み終わってしまう。毎度おなじみのお決まりの展開なので、言ってみればシリーズモノの2時間サスペンスドラマを見ているようなものだ。

個人的にちょうど仕事の環境が変わって、精神的にいっぱいいっぱいのときなので、こういうライトな小説はちょうどよかったかもしれない。あまり重たい小説は読みたくないけど、ちょっと活字が恋しくなったときにおススメ。