小川糸「食堂かたつむり」
食堂かたつむり

読了日:2009/03/06
個人的評価:★★★☆☆
書き下ろし234ページ(ポプラ社)

テキスト ボックス: 〜オビの解説より〜

ある日料理店のアルバイトから戻ると、家財道具もろとも同棲していた恋人の姿は消え、部屋はもぬけの殻になっていた。衝撃的な失恋とともに声まで失った倫子は、ふるさとに戻り、実家の離れで小さな食堂を始める。お客は一日に一組だけ。決まったメニューはなく、事前のやりとりからイメージをふくらませて、その人のためだけに作る料理。食べたお客に変化が現れ、いつしか「食堂かたつむり」で食事をすると願いごとが叶うという噂が広まっていった。一方、十年前に家を出るもととなった母親との執は解消されず、依然ぎくしゃくとした関係が続いていたのだが--。






















<Review>

小川糸氏の処女作。特に事前の評判を仕入れていたわけではないが、本屋にたくさん平積みでされていたので、とりあえず読んでみよう式で図書館に予約をかけて、半年以上経過してからようやく手元に来た。テイストが群ようこ氏の「かもめ食堂」とよく似ている。

料理を作る場面が鮮やかに描かれており、料理が好きな人にとっては面白いかもしれない。ただ、あまり展開がなく、時間がゆっくり流れていく感じなので、若干の退屈さは否めない。場面は大半が食堂かたつむりなので、映像化しても制作費が安く上がりそう。

amazonなどの評価を見ると辛辣なものが多い。私も半年待ってまでも読むほどの本でもないと思うが、世間の評価ほど悪くないとは思う。料理を通じて食堂に訪れる人々との心のふれあい、ほのぼの感がよく伝わってくる。物語が動くのは最後の20〜30ページ。結末はありきたりだが悪くないと思う。「食べる本」だと思って、さらっと読んでみるのもいいと思う。ちょっと美味しいものが食べたくなるかもしれない。