読了日:2009/03/01
個人的評価:★★★☆☆
オール讀物等掲載253ページ(文藝春秋)
<Review> 「植林」、「ルビー」、「怪物たちの夜会」、「愛ランド」、「浮島の森」、「毒童」、「アンボス・ムンドス」の7編からなる短編集。桐野氏は人の悪意や心の弱さを書かせたら実に上手い。すべての作品は女性が主人公であり、心の醜さなどが実に鮮やかに描かれている。もちろん、キャラクターの醜さがデフォルメされているのだろうが…。心の闇を描く小説でも、最後には少しは人として善意を見せるような場面も出てくるものが多いが、徹底的に醜さが前面に押し出されている。結末はぼかされて読者の想像に委ねているものもあり、読後感としてはすっきりしないので、人によっては消化不良感があるかもしれない。 ハッピーエンド的なストーリーに飽きている方にはおススメ。7編いずれも駄作はないといえる。桐野氏独特の色彩は長編小説では一層濃くなるので、まだあまり同氏の作品を読まれていない方には登竜門としてよいのではないか。 ちなみに、題名になっている「アンボス・ムンドス」とは、スペイン語で「ふたつの世界」という意味だそうだ。「天国と地獄」、すなわち、愛する人との地球の裏側へ海外旅行の「天国」と帰国後に待ち受けていた二人に対する非難の嵐の「地獄」をイメージしているようだ。 |