読了日:2009/01/27
個人的評価:★★★☆☆
書き下ろし517ページ(講談社)
<Review> 桜庭氏の作品を読むのは、『私の男』、『荒野』に続き3作目。すべて女性が主人公で、歪んだ親子関係の中で少女から大人の女性になっていくというのは共通の設定である。主人公(駒子)は、精神的に成長しきれていない誰よりも美しいママ(眞子)からの虐待を受け続け、満足に教育も受けさせてもらえず、情緒が未発達のままで他者との関わり方が分からない、でもそんなママのことが大好き、そんな破滅的な生活の中で突然の母親との別れ。その後、何が「普通」なのか分からないまま、もがき苦しみながら彼女なりの生き方を模索していく。 本作品が力作であることは間違いない(穴倉のようなところで3ヶ月間籠って書き下ろしたそうだ)。読んでいて桜庭氏が身を削って執筆したものであるということは十分に伝わってくる。また少女の目線での描写が実にウマいと毎回思う。ただ、個人的にはいい加減にこの設定には飽きてきたし、主人公の思考パターンや行動パターンがどうも共感できない。私自身が「普通」でありたいと思う気持ちが強いからなのか?? ストーリーは一貫してどうしようもなく暗欝、それでも、なぜか読まずにはいられない魅力がある。5歳から34歳までの人生が一気に流れ、本当の意味でママと決別をして生きていこうとする結末は美しく感動的である。桜庭氏自身の自伝的要素もあり、主人公が受賞して作家として開花していくシーンなどは実にリアリティがあり、そのあたりも興味深いところである。 |