読了日:2008/10/09
個人的評価:★★★★☆
遺稿156ページ(新潮社)
<Review> 最愛の妻、容子さんとの図書館での偶然の出会いに始まり、当時は珍しかった恋愛結婚を経て、一男一女をもうけ、容子さんが亡くなるまでの回想録。本作品の中で妻の容子さんがとてもチャーミングで可愛らしい女性として描かれている。でも、オノロケなんて茶化すようなものではなく、阿吽の呼吸でお互いを思いやり、慈しみ、深く愛し合っていたことがよく伝わってくる。夫婦二人きりの生活になってからは、多忙な中、毎年二人で海外旅行に出かけるほどのおしどり夫婦。晩年、癌とわかった容子さんをぎゅっと抱きしめ、「大丈夫だ、大丈夫。おれがついてる」という場面は涙なしでは読めない。本当に大切なものを失ったときの深い悲しみは、両親、妻子ともに健在である私には計り知れない。亡き妻への万感の想いが凝縮されている一生に一度きりしか書けない作品だ。 |