城山三郎「そうか、もう君はいないのか」
http://www.shinchosha.co.jp/images/book_xl/310817.jpg

読了日:2008/10/09
個人的評価:★★★★☆
遺稿156ページ(新潮社)

テキスト ボックス: 〜オビの解説より〜
五十億の中でただ一人「おい」と呼べる妻へ―愛惜の回想記。
新発見遺稿。
最愛の妻・容子が逝った……。特攻隊から復員した学生だった頃の奇跡的な出会い、文壇デビュー当時の秘話、取材旅行の数々、甦る人生の日々。そして衝撃のガン告知から、二人だけの最期の時間。生涯、明るさを失わなかった妻よ、君は天から舞い降りた妖精だった……。昨春、少年のような微笑を浮かべて逝った著者が遺した感涙の手記。



















<Review>

最愛の妻、容子さんとの図書館での偶然の出会いに始まり、当時は珍しかった恋愛結婚を経て、一男一女をもうけ、容子さんが亡くなるまでの回想録。本作品の中で妻の容子さんがとてもチャーミングで可愛らしい女性として描かれている。でも、オノロケなんて茶化すようなものではなく、阿吽の呼吸でお互いを思いやり、慈しみ、深く愛し合っていたことがよく伝わってくる。夫婦二人きりの生活になってからは、多忙な中、毎年二人で海外旅行に出かけるほどのおしどり夫婦。晩年、癌とわかった容子さんをぎゅっと抱きしめ、「大丈夫だ、大丈夫。おれがついてる」という場面は涙なしでは読めない。本当に大切なものを失ったときの深い悲しみは、両親、妻子ともに健在である私には計り知れない。亡き妻への万感の想いが凝縮されている一生に一度きりしか書けない作品だ。