桐野夏生「東京島」
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読了日:2008/10/04
個人的評価:★★★☆☆
「新潮」連載281ページ(新潮社)

テキスト ボックス: 〜オビの解説より〜
あたしは必ず、脱出してみせる――。ノンストップ最新長篇!
32人が流れ着いた太平洋の涯の島に、女は清子ひとりだけ。いつまで待っても、無人島に助けの船は来ず、いつしか皆は島をトウキョウ島と呼ぶようになる。果たして、ここは地獄か、楽園か? いつか脱出できるのか――。欲を剥き出しに生に縋りつく人間たちの極限状態を容赦なく描き、読む者の手を止めさせない傑作長篇誕生!

















<Review>

絶海の孤島という舞台で桐野ワールドが全開。極限状態におかれた人間はこうも醜いものに成り果てるのか、人間のダークな部分をクローズアップさせた問題作である。主に、東京島唯一の女性である清子の目線でストーリーが展開されていく。誰しもこのような状態に身をおいたらどうなるか分からないが(私はサバイバル能力がないので、すぐにドロップアウトすると思うが…)、それにしても、登場人物がすべからく不愉快極まりない。やたらとウソをつく者、卑屈になる者、人種差別…。嫌な気分になりながら、いつの間にか自分が東京島の住人になったかのようにこの世界に引き込まれるところが桐野ワールドの面白さだ。前半はサバイバルを中心に描写されていき、途中で中国人グループが流れ着き、複数の共同体が形成されるようになり、一層物語は複雑化する。清子の選択は…。ネタバレになるので内容には触れないが、結末にやや不満あり。どうせなら、もっと徹底的に救われないストーリーのほうがよかった。しかし、読了後に本作品が実在の「アナタハン島事件」をモチーフにしていると知り、寒気が…。