新世代のツンデレ・魅杏

 昨今はギャルゲー産業がにぎやかですね。少子化促進ゲームと報道されてしまったラブプラスに、ピュアな紳士しか入店できないという電波極まる設定で発売前からカルト的な人気を誇るドリームクラブ。さらにときメモ4も決定してるんですよね。ここまでギャルゲーが栄えるのは正直ちょっと社会情勢としていかがなものかと思います。アイマスですか? ああ、そういえばSPからとんと話を聞きませんね^^


 丹下桜を復活させてしまったラブプラス。なんといっても目の付け所がシャープですよね。従来のギャルゲー・エロゲーは女の子と付き合う、あるいはエッチすることを最終目的としてプレイしてきましたが、このラブプラス、付き合い始めてからが本編なんです。DSという携帯機でいつどんな場所でも、DSのタッチ機能を困ったぐらいに最大限に活用し、彼女とスキンシップを取っていくゲームであると。本当に素晴らしいと思います。我々はどうにかして二次元に入れないかと常々模索してきましたが、その欲求の隙を突いて『二次元が来い』を実行してしまったことは大きな革命です。

 着眼点の鋭さ、購買層に対する希求力、ハード性能の最大活用。このコンセプトから仕様に至るまで一分の隙もない構造美はゲーム史に残ってしかるべきだと思います、ただし購入者は黒歴史として。


 対してドリームクラブ。えぇと、端的に説明するとフリーターがバイト代握り締めてキャバクラ通いするという極めて遺憾なゲームです。一緒にお酒を飲んでお話してくれるホストガール(キャバ譲)たちはお嬢様・天然・ロリ・関西弁姉御・ツンデレ・淫乱教師・幼馴染・ボーイッシュ・メカ・ゴスロリと一通りのテンプレで固めており、シナリオも変化球のないもので素直に楽しめ、豪華声優陣の熱演も相俟って手堅い作りです。

 が、ロードが長すぎる(退屈しのぎを導入するとロード時間が延びる)・過剰なオートセーブ(リセットで巻き戻しが可能…何のためのセーブだよ)・攻略が簡単(すぐ55分ETS&延長なしが基本になる/金策や酩酊ゲージでやりくりする楽しみは最初しか味わえない)・システム面の作りこみが甘い(カラオケモードをはじめ)・一部会話に収録漏れ(アイリコスプレデーがシラフ分しか取ってないためETSで話すと会話が強制終了)など、いささかお粗末な作りです。

 キャラクターは可愛く描けているのにシステムが死んでいる。システム面に難はあるがキャラクターが可愛いから良し。これはどちらに比重を置くかで人によって判断がわかれるところですから結論は保留としておきますが、個人的な意見を言わせていただければベータ版に6,270円出すのは少々お高いと感じます。プレイしていないため割愛しましたが、ラブプラスはキャラクターの可愛さもシステム面も両立しているのですしね。

 ですがそれでもどうしても一箇所だけ高く評価したい。魅杏の存在です。

 魅杏は見ての通り、金髪+ツインテール+ツンデレというビジュアルはあんですとを想起させます。記号的なまでにテンプレなツンデレ。最初見たときは地雷キャラを確信したものです。

 話は変わりますが、ツンデレの代表的な台詞といえば皆さんは何を思い浮かべますか? 「べっ、別にアンタが心配なわけじゃないんだからね、勘違いしないでよね!」が挙げられれば、大抵の方は否定をされないと思います。

 ところで、ツンデレの原義を再確認したいと思います。ツンデレの定義は本来、「普段はツンツンしているけど一定の条件下でデレデレする」というはずでした。ツンの間のもどかしさとフラグ成立時のギャップの格差が破壊力を生むものであり(『スーパーロボット大戦W』のアリアは突発的に落ちたので非常に危険でした)、あるいは時間経過によって徐々にデレていく時のじわじわくる萌えにキマクるもので(『涼風』の朝比奈涼風はデレるプロセスをきっちり描いていて非常に危険でした)、その意味では上述の「べっ、別に〜」はツンとデレを共存させているという意味では厳密にツンデレの台詞であるとは言えないのかもしれません。

 さて、この魅杏。『本心は素直になりたいけど人前に立つと緊張してツンとした態度を取ってしまう』という、一瞬納得しそうになるけど冷静に意味分からない性格をしているのですが、これがこのゲームのシステムにベストマッチしました。お店で女の子を指名した後、その女の子からメールが来るのですが、店ではどんなにイベントが進行してもツンツンした接客であり、メールでは初めから素直な本心を見せてくれるのです。

 具体例を挙げると、店では「ハァ? あんたバッカじゃないの?」→メールは「面と向かうと、緊張しちゃって上手く話せないんだ」、プレゼントをすると「恩着せがましいのよあんたは!」→メールは「あんなこと言っちゃってごめんね、本当は嬉しかったよ」となります。すなわち新ジャンル『ツン接客・メールデレ』

 ツンデレは落ちる瞬間のギャップに破壊力が生まれるものです。アリアも涼風も、デレてしまった後は無価値です。しかしこの魅杏、接客中は最後までずっとツン、メールでは最初からずっとデレなので、常に新鮮なギャップ萌えを味わい続けることが出来るのです。あるいは、『アイマス』の伊織や『ゼロ魔』のルイズのように好意ゆえに(デレゆえに)ツンの態度が出てしまうツンかデレか定かならぬ現在のテンプレ的ツンデレと違い、ツンの時はツンに徹しデレの時はデレに徹するというツンデレの基本をもしっかり押さえています。

 魅杏には時間経過やフラグ成立によるツンデレとしての魅力の喪失がありえません。常にツンとデレを両立し続ける、新世代のツンデレ・魅杏。彼女の双肩にはツンデレ界の未来が掛かっているといっても過言ではないでしょう。

 もう自分でも何言ってんのかわかりません。

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