ロックマンゼクス

 ロックマン20周年記念作品の第1段が『流星のロックマン』、第2段が『ロックマンゼクスアドベント』だそうですね。ちなみに10周年記念作品は『ロックマン8』と『ロックマンX4』でした。ともにPS進出作品で、フルボイスが売りでした。今やフルボイスは当然だし、看板タイトルは『エグゼ』シリーズと『ゼロ』シリーズに取って代わっています。時代は変わるものですね。僕も年をとったわけです。

 さて今回は『ロックマンゼクス』のレビューをしたいと思います。今作はストーリー的にもシステム的にも『ロックマンゼロ』を踏襲したもので『ゼロ』シリーズの直接の続編といって問題ないでしょう。

 今作は主人公が『ライブメタル』というものを使いロックマンにロックオン(変身)して戦う、という斬新なものですが…、なんていうか、僕も年をとったわけです。今作での『ロックマン』の定義は『ライブメタルでロックオンしたもの』であり、終盤の敵もロックマンで『ロックマン同士の戦い』というのが強調されているんですが、「仮面ライダーを初代から見てた人が今のライダーを見たときの衝撃ってこんなもんなのかな」って感じ。『仮面ライダーカブト』を思い出しましたね。実際変身に関しては『仮面ライダーファイズ』が元ネタだそうです。

 まあでも僕個人としては、こういうのもアリかなと思います。自分の中での『ロックマンの定義』に拘って新作を受け付けないような狭量な価値観しか持ち得ない人はどうせ本当にロックマン9が出たって楽しめっこないだろうし、購買層である今の子供にウケるように今風に味付けするのは当然ですしね。ファーストガンダムしか認めないいわゆる『1st信者』はダンバインでも見てろです。

 ただ1st信者じゃなくてもSEEDが終わってるのと同様に、この『ゼクス』もロックマンとしてではなくアクションゲームとして許せない部分があるので、そこらへんを述べていきます。
 

・フィールド広すぎ

 今回はガーディアンベースから指令を出されたミッションの任地まで自分の足で歩いていかなければなりませんが、フィールド広すぎ。某大作RPGの8作目が『世界中を走り回れる!』と強調してめんどくさくなってるのと同じです。しかも指令では任地の場所はノーヒント。「研究所が襲われているわ」とか「溶岩地帯でライブメタルを発掘しているわ」とか細かいところまでわかってるなら場所ぐらい教えろよ!またエリアA・エリアB…といった形でエリアは細分化されているものの、エリア間移動時(A-3からB-1への移動など)にはマップ名が表示されるもののマップ間移動時(A-1からA-2など)では表示されず、必ずしも1→2→3→4…などとなっているわけではないため自分がどこにいるのか正直わかりづらいです。表示の仕方は邪魔にならないようになっているのだから全てのマップ移動時に表示するようにするべき。

・ミッションの不便さ

 その上広大すぎるマップを延々走らされてようやく任地の1つにたどり着いたとしても、現在受けているミッションと同じミッションでないとイベントが始まりません。つまりエリアE・F・G・Hにミッションがあり、そのうちエリアEのミッションを受けているときにエリアFにたどり着いてもイベントが始まらないというわけです。そこでエリアEでのミッションを辞退しエリアFでのミッションを受けようとすると何故かマッピングした分がリセットされてしまう上、ミッションを受けた場所まで戻されてしまいます。クソ広大で分岐しまくりのわけわからんフィールドの中での唯一の指標であるマップがなくなる。「マップ広いんだからあちこち歩いてマッピングしよう」とか「ためしにこのミッションをやってみよう」とかそういった遊び心はこのゲームには通用しません。
 ゲームオーバー時も同様で、ミッションを受けた場所まで戻されます。死ぬたびにクソ長い行程をまた歩かされるわけです。ロックマンシリーズが高難易度でありながら受け入れられてきたのは『死んで覚えろ』という反復の練習の末に突破できるギリギリかつ絶妙な難易度設定の賜物です。これは『マリオ1・2』も同じです(3は流石にゲームオーバー時に戻されすぎる気が…)。で、この『ゼクス』ではそういった反復を否定するようなクソダルい行程を踏ませるくせに落とし穴や針トラップが豊富です。これは『心地良い難易度』ではなく『ただ理不尽』。しつこく同じ落とし穴にハマりまくるヌルゲーマーな僕には厳しすぎました。誰も彼も一発クリアできると思ってるんでしょうか?それともバグチェッカーたちがゲーム上手すぎて全て一発クリアだったんでしょうか

・中ボス

 道中に存在する中ボス。マップを通るたびに毎回復活します。はっきりいってジャマ。特にD-2にいる『X1』OPステージのビーブレイダーに激似の中ボスは弱いくせに2回連続で登場して時間を取らせるばかりで障害として機能しておらず、更にエリアDは他のエリアへの道になっているので何度も往復する必要があるのでそのたびに戦わなければならずテンポの悪さと不快感しか生み出しません。

 ここまでの3つの不満点はフィールドを一続きにした新機軸によって生じたデメリットです。従来作品のシステムであればおきなかったことです。X1へのオマージュが却って皮肉になってます
 以上に述べた広大すぎるマップのせいで正直2周目をやる気がおきません。まぁ2周目はマップを覚えている分ミッション辞退リセットの手間が省けるのでラクっちゃラクなのですがそれでも任地に行くまでの無駄に長い行程を踏まなければならないことは変わりません。繰り返し遊ぶ気になれないアクションゲームというのはいかがなものでしょうか…。

・モデルHx

 今回の魅力であるダブルロックオン。つまり仮面ライダーでいうフォームチェンジなわけですが、5つあるモデルのうちHxが強すぎます。『X3』ではダッシュジャンプとエアダッシュが重複できませんでしたが、モデルHxはダッシュジャンプのあとにエアダッシュが使え、更にヴァリアブルエアダッシュ(上方向へのダッシュ)とホバリングまであるのでマップ間移動での高速化にも落とし穴・針トラップ対策にもなるのでこれだけ使っていれば概ね問題ありません。となると5つも用意した意味がなくなります。
 あとずっとHx使ってるとセルに見えてくるのがかなりイヤ

・モデルPx

 といっても他のモデルもそれぞれ差異を打ち出しているので要所要所では役立ちます。Zxの攻撃力はボス戦向けだしFxは弾道カスタムで様々な使い方が出来る。Lxは水中戦で必須だしアイテムサーチャーが便利。
 ではPxの利点は?ありません。隠密行動を主としているといわれても隠密行動できる機会なんてないし足が速いわけでもない。攻撃力は全モデル中最弱。サブ能力で索敵機能もありますが、Lxの方が範囲が広い上にアイテムも追えるのでわざわざ使う必要がありません。O・I・S(波紋疾走)で無敵になれますがこの攻撃力では…。

・人間状態

 というより変身してない状態のこと。攻撃もダッシュも壁蹴りもできないのでまるで使えませんがしゃがむことで1マス分の通路を通れるようになります。つまり狭い道を通るときだけ人間状態になる必要があります。ここまで書けばわかりますね。一箇所を通過するだけのためにわざわざ非力な形態に戻させるのは手間なだけで何も面白くありません。テンポを損なうだけです。せっかくPxが忍者なんだからスライディングアクションでもさせれば差異も生み出せてよかったのではないでしょうか。
 また民間人には人間状態で話しかけなければ会話になりません。ここまで書けb(中略)。話しかけたところで有益な情報が貰えるわけでもないので人が背景にしかなっていません。ところが火災現場に残された民間人を救出するミッションがあるのですが、ここでも変身を解かなければ会話になりません。Hx→人→Hx→人→Hx→人…の単純作業を強要させられ、間違えて変身したまま話しかけた日にゃ「こわいよ!あっちいってよ!」「お前なんぞに助けられるほど落ちぶれちゃおらんわい!」「イレギュラーめ貴様が犯人か!」ナメんなこちとら慈善事業でヒーローやってんじゃねぇんだよぉぉぉぉぉとブチキレそうになることを繰り返し救助活動をしなければなりません。不快

・ボスラッシュ

 ロクロクでもそうだったけど回復アイテムぐらい出してください…。プレイヤーが誰でも道中は完璧ボスは瞬殺を前提に作られているとしか思えません。道中は雑魚大量配置で穴だらけ、ボス8体を回復なしで相手にしたあとにラスボス戦ですよ?しかもゲームオーバーしたらミッションを受けたところまで戻されるのは相変わらずです。


 とまぁ以上にダメ新機軸を挙げてきましたが、荒野に咲く一輪の花のような最後の希望の新機軸である『レベルフィニッシュ』に関してはベタ褒めしておきます。
 ボスおきに弱点の部位が設定されており(例えばサル型なら腕、など)弱点に全く攻撃を当てなければ『Lv4 FINISH』、当てすぎるとレベルが下がっていくというもので、ただ倒したいだけなら弱点を攻撃しまくればいいし、上級者はレベル4フィニッシュに拘る、といったプレイヤーのすみわけに成功しています。特にフィストレオ、フランマールに関しては弱点がデカすぎてレベル4フィニッシュが困難な分成功したときの達成感は大きい。

 仮面ライダーやガンダム風にいえば『平成ロックマン』とでもいうべきか、ストーリーも王道ながら従来作品に縛られない挑戦的な作りで面白いしムービーは美麗。上ではシステム面でダメ出ししてきましたがアクション面はさすがによく出来ているし、『アドベント』発売前に一度は遊んでみてはいかがでしょうか。
 

 ただし1周で十分です。

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